2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26289211
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 秀樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20344963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 広子 横浜市立大学, 総合科学部, 教授 (10257529)
小杉 学 東北工業大学, ライフデザイン学部, 准教授 (30410856)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 管理不全 / マンション / 解消制度 / 被災マンション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の4課題について研究を進め成果を得た。 1.都市部における管理不全マンションの調査と考察:昨年実施した管理不全リゾートマンション調査に引き続き、本年度は、都市部での管理不全マンションを調査した。日本マンション学会代議員の協力を得て、全国で13事例の管理不全マンションを把握し、現地調査・登記簿調査等を行った。これにより、管理不全に至る経緯を明らかにするとともに、多数決による解消制度で解決可能かどうかの検討を行うための基礎資料を得た。管理不全マンションの個別実態の解明は初めての成果であり、貴重な調査となっている。 2.被災マンションの追跡調査:仙台の被災マンション6事例について、現在までの経緯を把握した。その結果、建替えが1例、敷地売却完了が1例、敷地売却に向けて進行中2例、1社に所有権集約1例、係争中1例であった。そのうち、被災マンション法による敷地売却決議がなされたものが2例ある。これらの経緯を通して、多数決による解消制度に必要な要件を明らかにした。 3.フランスの管理不全マンション対策の調査:管理不全マンション対策に早くから取り組んでいるフランスの実態を調査した。管理不全状態を裁判所が認定することで、再生に向けて所有権に制限を加える仕組みが参考になると判断された。 4.一般老朽マンションを対象とした解消制度の中間試案の検討:2年間の研究終了時点で、管理不全マンション及び被災マンションの実態、及び諸外国の解消制度の実態を踏まえて、日本での解消制度の中間試案を作成した。その内容は、多数決による解消決議を創設するが、その決議には客観的要件を定めることとし、築年数または特定行政庁による老朽度判定を要件とすることが適切であるとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の3点において順調または計画上の成果をあげている。 1.当初調査が困難と予想された(反社会的団体の関与が予想された)都市部の管理不全マンションの詳細調査を実施することができ、管理不全に至る背景が把握できた点で順調かつ計画以上の成果をあげたと判断できる。とりわけ、投資型、1階店舗併設タイプ、大口所有者がいるタイプで管理不全が起きやすいという貴重なデータを得た。 2.仙台の被災マンションの追跡について、詳細な経緯を把握することができ、当初計画以上の成果をあげている。これは、マンション学会東北チームが継続的に被災マンションに関わってきた成果といえる。これを通して、多数決による解消決議の課題を解明することができた。 3.当初計画通り、前半2年間終了時点で「解消制度の中間試案」を専門家との協議を踏まえつつとりまとめることができた。 一方、以下の2点はおおむね順調だが、さらなる課題を有している。1.諸外国の解消制度の調査は、フランスについて実施することができ、制度だけではなくその適用実態を含めて把握できた点で大きな成果となった。今後は、さらに他国について実態を把握することが課題となっている。2.リゾートマンション調査は、越後湯沢について昨年度に実施して大きな成果を得たが、他地域について実施することが今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、後半段階の研究に入るが、以下の課題に取り組む計画である。 1.解消制度の中間試案の有効性評価 管理不全マンションに対して、多数決による解消制度で問題解決できるどうかの検証を行う。そのためには、登記簿などを通した所有権の把握に加えて、地価や中古価格などの経済条件を把握して検討することが課題となる。 2.建物の老朽度判定手法の検討 中間試案では、特定行政が老朽度を判定して、多数決による解消・私権制限を行うことを提案した。これを踏まえて、老朽度の判断手法の研究が後半の大きな課題となる。そのために、災害時の危険度判定、耐震性不足の判定等の適用実態を把握することで、この課題に取り組むことを計画している。
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Causes of Carryover |
繰り越しが生じた理由は次の2点である。都市部の管理不全マンションで調査継続中の案件が3件ありその費用を約70万円繰り越したこと、及び、分担研究者の一人が所属大学が明海大学から横浜市立大学に変わったため研究遂行が一時中断し、約90万円を繰り越したことである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
都市部の管理不全マンション調査は実施中であり、2016年度早期に執行予定である。また、分担研究者が担当するリゾートマンション調査は、2016年度1年間をかけて実施する計画である。
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Research Products
(15 results)