2014 Fiscal Year Annual Research Report
著しい格子軟化を利用した弾性熱量効果―新しい冷凍材料としての可能性
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26289230
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 隆 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50228912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属物性 / 構造・機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
Fe-31.Pd合金ならびにFe3Ptはいずれも,温度低下に伴い,立方晶から正方晶へと弱い1次のマルテンサイト変態を示す.これらのマルテンサイト変態は弾性定数C'の顕著な軟化を伴うため,[001]方向のヤング率は,変態温度に近づくにつれて大きく変化する.そのため,一定応力下における弾性歪の大きさは温度に大きく依存することとなる.このように,弾性歪が温度に大きく依存する場合,熱力学におけるマクスウェルの関係式から,応力付加ならびに除去にともなう大きな熱量効果が出現することが期待できる.本研究はこのような弾性熱量効果を実証することを目指している. Fe-31.2Pd合金の単結晶を育成し,[001]方向が圧縮方向となるような試験片を切り出した.マルテンサイト変態温度は230Kである.この試験片に熱電対を溶接し,[001]方向から断熱的に応力を付加・除去し,その際の温度変化を測定した.その結果,175Kから335Kという広い温度範囲において,200MPaの応力付加に際して1.5K以上の温度上昇が起き,かつその応力除去に際して,同程度の温度低下が起きることを確認した.温度変化が最も大きく現れる温度は,変態温度より少し高温側にあり,250 Kで200MPの応力ろ付加・除去すると3Kを超える温度変化が現れる.これらの温度変化の実測値は,マクスウェルの関係式から予想される温度変化と比べると明らかに小さい.これは,本実験に用いた断熱条件が不十分であることを意味する.すなわち,断熱条件を改善することで,さらに大きな熱量効果の実現が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fe-31.2Pd合金の単結晶を育成し,応力の付加・除去にともなう温度変化を目的通りに測定することに成功した.また,研究成果を,学会発表するとともに,金属系の材料においては,高い評価を得ている学術雑誌(Acta Materialia)に発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,平成27年度はFe3Ptにおける弾性熱量効果の実測を行う.また,得られた研究成果を学会発表するとともに,学術雑誌に投稿する. Fe3Ptの単結晶育成は,これまでに何度も成功しており,特に問題なく試料は作製できると考えられる.一方,断熱温度変化の測定に関しては,測定温度がFe-31.2Pd合金と比較して低温側にあるため,測定冶具を改造する必要がある.現在,冶具のテスト中であるが,今年度中には断熱温度変化の測定ができる予定である.
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Causes of Carryover |
本研究課題では,高純度Feと高純度Pdの材料費が物品費に占める割合が非常に高くなる予定であった.しかし,本年度はFe-31.2Pd合金の単結晶育成が非常に効率よく行うことができた.また,当初予定していた90K~400Kの温度範囲における応力下温度変化測定冶具も,他の実験で用いていた冶具を流用することで,当初予定より,低価格にて測定を実現することができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,Fe3Pt単結晶を育成する.溶解原料であるPt価格は高騰しており,この材料費として,次年度使用額を一部利用する.さらに,10 K~300 Kにおける応力下温度変化測定に用いる冶具と寒剤費用としても,次年度使用額を利用する予定である.
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Research Products
(5 results)