2015 Fiscal Year Annual Research Report
α鉄中のボロンの存在状態と拡散:第一原理計算と実験の統合によるアプローチ
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26289231
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
沼倉 宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40189353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲村 龍介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70396513)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鉄鋼材料 / 格子欠陥 / 状態図 / 拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bの固溶形態の解明 (1): イオンチャネリング実験によって結晶内の占有位置を決定するための二つの予備実験を、永田晋二氏(東北大学金属材料研究所准教授、連携研究者)の協力を得て、同研究所に設置されているイオンビーム分析装置を用いておこなった。第一に、B濃度が 0, 26, 88 ppm の Fe-B 希薄合金多結晶試料を用いて微量のBをプロトンビームによる核反応分析で定量的に分析できるか否かを調べた。検出器の位置を調整することにより、11B (p, α) 8Be 核反応で生じるα粒子を検出できた。その収量(積分値)は試料のB濃度にほぼ比例しており、この条件で定量分析ができることが確かめられた。第二に、ひずみ焼鈍法で結晶粒を粗大化させて得た 1 x 5 x 5 mm のほぼ単結晶とみなせる Fe-26 ppm B 合金試料を用いて、Bの溶体化処理はおこなわずにチャネリング実験を試みた。試料の取り付け角度を調整して <110> と <111> 方向からビームを入射させて軸チャネリング実験をおこなったところ、いずれにおいてもFe原子による後方散乱収量は入射角(チャネリング条件からの傾角)に対しdip状の依存性を示した。次の課題はFe-B希薄合金試料を高温で溶体化したのち急冷して過飽和固溶状態を凍結することである。 Bの固溶形態の解明 (2) : 第一原理計算によって B の固溶状態を理論的に予測し、それを実験で実証するにあたって鍵となる性質を理論的に計算する方法を検討した。溶解エンタルピーの計算においてスーパーセル法で避けられない鏡像との弾性相互作用エネルギーを補正して、Bの溶解エンタルピーを正確に計算する方法を確立した。置換型に固溶する場合の母相の収縮量、侵入型に固溶する場合の膨張量と一軸ひずみの大きさも計算できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではチャネリング実験は第2年度までに終える予定であったが、初年度のチャネリング実験の準備(試料作製)の遅れを取り戻すには至っていない。SIMSによる長距離拡散の実験は人的資源が不足して予備実験しかできておらず、力学緩和実験による短範囲拡散の実験はBを過飽和固溶状態とする方法が確立できていないため、拡散実験は見るべき進展がなかった。いっぽう第3年度から予定していた理論計算は、東北大学金属材料研究所計算材料学センターの計算機を共同利用研究で利用して先行して開始し、一定の結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている二種類の拡散実験を、卒業研究学生と大学院学生の研究テーマとして着実に進める。
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Causes of Carryover |
11月に投稿した論文が受理されれば掲載料として支払うことになる額を取り置いておいたが、受理に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該論文は改訂して再投稿準備中であり、受理されればその掲載料を支払う。
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