2014 Fiscal Year Annual Research Report
ニオブイオン徐放性の制御によるリン酸塩ガラス薄膜の生体機能化
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26289238
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
春日 敏宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30233729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 浩孝 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20431538)
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40402656)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リン酸塩ガラス / インバートガラス / ニオブイオン / 生体親和性 / 抗菌性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、チタン系金属等への生体機能化(骨形成促進や抗菌性付与)コーティングを目的とした、ニオブ含有リン酸カルシウム系インバートガラス薄膜を設計するものである。ニオブイオンの役割は、①リン酸塩ガラスの形成能と化学耐久性を高めて基板上で薄膜として長期間機能させるとともに、②細胞を刺激して骨形成を促進する主源として機能させることである。本年度は、ガラス組成と構造の解析を中心に検討した。 まず、CaO-P2O5-Nb2O5系ガラスを溶融急冷法で作製し、緩衝溶液へのイオン徐放量を調べた。さらに、ガラス形成能の向上とイオン徐放性の制御を考慮して、MgOやAg2Oの添加効果を調べた。Mgを導入することでガラスの電場強度Fが増しガラス骨格を強化し、ガラス形成能を向上させることが示された。一方で、Caのみの場合より、Mgを混在させることで混合カチオン効果が現れ、イオン溶出量が増加する組成域が現れた。イオン徐放能の制御には、Agイオンの導入も有効であった。 マウス骨芽細胞様細胞を用いて、ガラス上での増殖性と分化能を調査した。溶出させるべきNbイオンは当研究グループで見いだした分化能向上に有利な量を設定したガラス組成を用いた。Mgの導入により、細胞の接着、増殖、分化の全ての過程において促進効果が見られた。Nbの効果も加味されているとは期待されるが、むしろガラスからのイオン溶出を制御する役割に大きな効果を示していると想像された。Agイオンを含むガラスでは抗菌性が発現することも明らかにした。 リン酸塩ガラス構造を計算化学により求める検討を開始した。まずは二成分系ガラスの検討から始めているが、初期設定の考察に時間をとられ、解を得るところまでには至っていない。また、rfスパッタ装置の立ち上げ調整にも時間を要し、条件検討までには至らなかったので、次年度に注力する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶融急冷法にて作製したガラスを用いて、イオン溶出量、水中でのpH変化、NMRとラマン分光によるガラス構造についての様々な基礎データが得られ、学会発表を積極的に行った。この結果は計算による構造解析にも重要である。なお、次年度はrfスパッタコーティングでは十分な結果が得られていないため、作製条件を見いだすことに注力する。また、計算による構造解析についても、Nbを含むガラスでは諸データが少なく、現状では検討はかなり難しい。そこで、次年度は取りかかりとして、より情報が入手しやすい可能性のあるインバートガラス・60CaO-30P2O5-10TiO2ガラスについても計算可能か試みることにする。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、CaO量の多い組成、MgO, Ag2O添加組成のガラスについて、ガラス形成能、イオン溶出量、水中でのpH変化、NMRとラマン分光によるガラス構造の分析を行う。なお、上述したように、rfスパッタによるコーティングでは昨年度導入した装置の立ち上げに時間を要し十分な結果が得られていないため、CaO-P2O5-Nb2O5系インバートガラス薄膜コーティングが実現できる条件を見いだすことに注力する。リン酸塩系では組成のずれが生じやすいことが知られているが、どの程度の組成のずれが生じるのかを調査し、それを見越した新種ガラスを見いだすことをめざす。うまく薄膜化できれば、引張強度試験により金属基板との接合力を調べる。 計算による構造解明については、文献調査を強化しする。昨年度の検討によって、60CaO-30P2O5-10Nb2O5ガラスを採り上げるには、Nbの配位数決定やNb-OのポテンシャルとNb-O-P結合角を想定する必要があり、現在のデータでは検討はかなり難しい。そこで、次年度は取りかかりとして、より情報が入手しやすい可能性のあるインバートガラス・60CaO-30P2O5-10TiO2ガラスについて計算可能か試みることにする。 生体機能性評価については本年度で効果が発現することおおよそ見いだすことができた。スパッタ膜上での増殖性と分化能、抗菌性を調査することが今後の目的となる。さらに、加熱して結晶化させて、生体親和性結晶を意図的に析出させることで一層の機能促進効果が生まれる可能性もあり、検討を始める。
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Causes of Carryover |
今年度は、スパッタ装置の立ち上げ調整に時間をとり十分な検討ができなかったことから、次年度に作製条件の詳細な検討をすることとし、これに必要な費用を確保する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スパッタに必要な原料、治具などの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(10 results)