2014 Fiscal Year Annual Research Report
プラチナ触媒を使ったギ酸処理による低温接合手法の開発
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26289247
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須賀 唯知 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40175401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低温接合 / ギ酸 / プラチナ触媒 / 接合界面 / 表面活性化 / 銅直接接合 / 酸化膜還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有機材料やガラス、半導体・金属など対象材料を特定せずに幅広く適用できる新しい低温接合技術として、ナノ密着層にPt触媒を利用したギ酸処理による接合手法を新たに提案するものである。特に、その接合プロセスを確立し、接合のメカニズムを解析するとともに、この手法をさまざまなデバイスの集積化に関わる接合へ適用し、その有効性を検証することを目的としている。 初年度は、まず、提案するプロセスの基本的メカニズムを明確にする点に重点をおき、そのための実験環境を整備した。特に、ギ酸ラジカルの生成の定量的な評価のために、ギ酸分解ガスの四重極質量分析、電子スピン共鳴ESR分析、およびinsituの赤外線分光分析FTRI分析、およびTEMによる接合界面評価を行った。 その結果、Pt触媒によるギ酸ガスの分解反応の分析から、Pt触媒によってギ酸が分解し、水素ラジカルが発生すること、これが銅表面の還元に有効であること、また、その寿命は予想以上に長く、少なくとも10cm程度の距離においては有効であることが判明した。すなわち、ギ酸の分解により生ずる活性水素原子がCu表面の酸化膜をある程度還元し、その後、ギ酸塩の形成によってCuのナノ粒子が生成、それと同時に接合が進行することにより、200℃以下の接合が可能である。 接合プロセス開発について、さらに具体的な接合プロセスの詳細検討が可能となるよう、あらたな真空環境の装置設計を進めた。また対象としては、Cu-Cuの低温接合を中心に進めたが、さらにSn-Agへの適用を検討した。すなわち、SnAgとCuの接合を行った。その結果、この試料においても160℃でPtギ酸処理接合が可能であった。これらの結果に基づき、Cu-Cuについては、TSV基板の接合をモデル的に行い、Ag-Snについて、パワーデバイスのダイボンディングをモデル的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案するプロセスの基本的メカニズムを明確にする点について、当初予定していた、in-situのクロマトグラフフィは必ずしも有効でないことがわかり、それに代わる手法として、ギ酸分解ガスの四重極質量分析、電子スピン共鳴ESR分析、およびinsituの赤外線分光分析FTRI分析を行った。結果的には、ギ酸ラジカルの生成の定量的な評価を行うことができ、水素ラジカルが発生するという明確な結論を得ることができ、また予想に反してそれが長寿命であるという新たな知見を得ることができた。 Agへの適用については、より実際的な、工業界で用いられているSn-Agを対象として実験を行い、当初、想定した結果を得ることができた。 また具体的な接合の低温化の限界が、160℃付近にあることを定量的に示し、その根拠も明らかにすることができた点は多いに評価されると考える。 一方、TSV(Through Silicon Via)基板の3D積層やパワーデバイスのダイボンディングについては、量産化に直ちに移行できるだけのデータを蓄積するまでには至らず、モデル的に実証するまでにとどまった。しかし,本研究は、量産に適用すること自体は目的ではないので、まずは量産に適用できる方向性を明らかにしたという点で評価されるべきものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、この手法をポリマフィルムの常温接合でナノ密着層と組み合わせる試みを行う。ナノ密着層を用いた接合は常温接合であるメリットがある反面、接合は真空が前提となっている。これに本研究提案を組み合わせることで大気圧下での接合を行う。メカニズムの観点からは、ナノ粒子生成に必要なナノ密着層(SiとCuを組み合わせることを考える)の厚さの制御である。これによって、CuやSnと樹脂が接合面に共存し、それぞれに積層接合するハイブリッド接合の可能性が生まれる。デバイスへの適用においては、半導体デバイスやMEMSの3D積層を想定したモデルの接合を行う。また大気中接合という観点から、表面の水酸化層形成との組み合わせという新しい手法も検討事項に加える。
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Research Products
(7 results)