2014 Fiscal Year Annual Research Report
貴金属ナノ粒子のシリコンへの無電解析出のグリーンサステイナブル展開
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26289276
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
八重 真治 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00239716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10347528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 材料加工・処理 / めっき / 太陽電池 / 廃棄物再資源化 / 走査プローブ顕微鏡 / 表面状態評価 / 核形成 / 接合信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
貴金属ナノ粒子のシリコンへの無電解置換析出は、金属イオンを含むフッ化水素酸にシリコンウェーハを浸すだけの簡単なプロセスで、金属微粒子援用エッチングによる太陽電池の無反射化やシリコンナノワイヤー製造に利用されている。申請者らは、貴金属ナノ粒子析出初期過程の解明を目的とした基礎研究と、太陽電池の無反射化、太陽光水素製造、シリコン上への信頼性の高い金属薄膜および配線の形成、廃棄物からの貴金属回収などを目的とした応用研究を行ってきた。本研究では、基礎研究の深化と応用研究の進展により、析出機構の詳細を解明し、半導体産業の製造時の廃棄物を利用して貴金属を回収するリサイクルプロセス、シリコンデバイスの電極形成の省エネルギー省資源化、高効率低コストなシリコン太陽電池の製造を図り、本技術をグリーンサステイナブルに展開することを目的としている。 本年度は、貴金属析出の詳細解明を中心に研究を推進するとともに、応用研究の基礎的事項と基礎研究の中で原因を解明した課題への対策を検討して以下の成果を得た。 シリコン粒子への8種類全ての貴金属の析出と、それを利用した廃棄物からの金、銀、銅の回収に成功した。さらに貴金属回収に半導体産業で発生するシリコン切削くずを利用可能であることを示した。シリコンウェーハにルテニウムを析出させることに成功し、これによる微粒子援用エッチングについて検討を開始した。析出させた金ナノ粒子を触媒とする高信頼性無電解ニッケルめっき膜形成における解明構造解析とコンタクト抵抗評価を行った。白金粒子析出の数密度変化を一般の核形成理論に基づく数式によりフィッティングすることに成功し、析出機構を解析した。白金粒子析出を利用したシリコンの表面状態評価に成功し、アルゴンプラズマエッチングによりアモルファス層とともに結晶シリコンに影響層が形成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎研究と応用研究の双方で、期待した成果が得られている。特に、貴金属の回収では依頼講演を複数行ったり、ラジオや新聞で取り上げられ、JSTによる国際特許出願の支援の獲得、展示会参加や企業との情報交換および提供試料による検討が進展するなど、実用化に向けた着実な進捗が見られた。また、めっき膜とシリコン界面の組織構造と化学状態の解析が進捗し、金による特異的な密着性発揮の機構解明が進んだことも基礎および応用の観点から評価に値すると判断している。 一方で、走査プローブ顕微鏡の導入では、大気中での形態観察などで大きな改善が見られ活用しているものの、溶液中での観察は高難度であるばかりではなく当初期待した単一粒子の電気特性評価はさらに難しいことが明らかとなった。 これらのことから、現在までの達成度は上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの前半の研究では、電気化学的なアプローチおよび走査プローブ顕微鏡を中心とした表面解析手法を駆使することで、無電解置換析出の詳細を解明し、析出粒子の選択性と制御性を向上させることに重点を置く。これと平行して、貴金属回収の選択性・分別性の向上、高信頼性で低抵抗な無電解めっき膜のシリコン上への直接形成、極薄多孔質層形成によるシリコンの無反射化の検討を進める。 走査プローブ顕微鏡による電気化学測定や液中観察、単独粒子の特性評価は難度が高いばかりではなく、新規に導入したアップグレードにより改善された大気中観察により様々な知見が得られていることから、大気中の走査プローブ顕微鏡観察と走査型および透過型の電子顕微鏡観察、X線光電子分光分析などに重点を置いて研究を推進する。 平成28年度および29年度の後半の研究では、応用展開に重点を置く。特に、都市鉱山からの貴金属回収プロセスの確立、信頼性と導電性が高い無電解めっき膜形成、シリコンの高度に制御された多孔質化による反射防止と高効率太陽電池製造に取り組む。
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Causes of Carryover |
シリコン表面の微細マスクパターン形成のための共同利用開発センター利用および論文投稿のための英文添削費用が発生してその他の支出が増加したものの、物品費のうち消耗品の大きな部分を占めるシリコンウェーハについて手元在庫を活用したことと予備実験用に安価なものを購入したこと、旅費について他の予算からの支出や主催者からの支給があったことなどにより、実支出額が交付申請書に記載した額を下回ったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において、研究の進捗に伴って必要となった次の費用に充てる。それらは、化合物半導体などの新規な材料の購入のための物品費、米国での学会発表のための旅費、研究補助のための謝金、論文投稿のための英文添削や試作のための共同開発センター使用料などである。
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Research Products
(23 results)