2014 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的手法による樹脂/金属ナノ接合界面の構築と微細回路形成
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26289277
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
赤松 謙祐 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60322202)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダイレクトめっき / ポリイミド / 固相電気めっき / 銅ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、基板材料として現在フレキシブル基板材料として主に利用されているポリイミド樹脂を用い、金属材料として銅を用い、樹脂上への密着性に優れた埋め込み型微細金属配線の高効率製造手法を確立することを目的とする。本年度は電極反応の主因子として、高分子樹脂の構造に着目した。ポリイミドの分子内官能基密度を部分脱水縮合反応により変化させ、金属イオン濃度を制御した薄膜をITO基板上に作製し、膜厚、イオン濃度および印加電圧と電極反応速度との相関を系統的に評価した。 各工程におけるポリアミック酸薄膜の構造変化を ATR-FTIR を用いて評価した結果、銀イオン吸着後のポリアミック酸薄膜 では、カルボキシ基の C=O 伸縮振動に由来するピークが減少していた。これはカルボキシ基のプロトンと銀イオンがイオン交換されたことに起因していると考えられる。また、銀イオンを遊離したポリアミック酸薄膜 では、カルボキシ基に由来するピークが再び発現している。この結果より、銀イオンとプロトンのイオン交換により再度カルボキシ基が形成されたものと考えられる。さらに、部分脱水縮合によりカルボキシ基を減少させると電極反応速度が低下したことから、イオン交換律速となっていることが示唆された。また、本手法では熱処理によるイミド化にてポリイミドと金属ナノ粒子パターン間の密着性が強固になり、これにより ITO 基板からの樹脂剥離プロセスの際にポリイミド側にパターンが残ったものと考えられる。また、得られた銀パターン / ポリイミド構造体はテープ剥離試験をクリアしたことから優れた密着性を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では薄膜析出における主因子パラメータ抽出とその影響度の定量化を目指し、膜内の金属イオン濃度、高分子樹脂の構造、印加電圧および電流密度の析出速度に対する影響について検討した。その結果。膜厚、イオン濃度および印加電圧と電極反応速度との相関を明らかにすることとができたことから、当初目標はおおむね達成できたと考えられる。また、樹脂の部分脱水縮合による膜内イオン濃度の調整について新しくトライしており、加熱処理による樹脂の化学構造変化を利用したイオン濃度の制御に初めて成功しており、この影響についても反応速度論的解析を進めつつあり、次年度に向けて研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、本プロセスでは樹脂内部で析出反応が進行することにより、金属ナノ粒子と樹脂の複合層からなる金属ナノ構造体が成長し、その速度は膜内イオン濃度に依存することが明らかとなった。。本年度は界面微細構造と密着性について検討し、最終目標として回路基板の実用化に必要なピール強度1.0 kgf/cm以上の密着強度を有する無粗化接合を実現することを目指す。 本プロセスにて還元、析出、成長する金属ナノ粒子層はすべて構造的、電気的に接続しており、樹脂との複合化により接触面積を増大させ、密着力の確保を図る。本項目では、ナノ粒子サイズおよび複合層全体に対する金属成分の充填率と密着強度との相関を系統的に評価する。界面ナノ構造はウルトラミクロトームを用いて作製した超薄切片を電子顕微鏡により観察する。また、薄膜のピール強度を測定し界面密着強度を評価するとともに、得られた知見を薄膜作製ににおける電気化学反応条件にフィードバックさせることによって構造最適化を行う。特に、回路として利用する場合の伝送損失を最小現にするため、ナノ構造の薄膜化を心がけ、界面微細構造パラメータ(厚み、粒子サイズおよび充填率)と密着強度との相関性を明確化する。本年度はこの定量的証明、モデル構造の設計・構築ならびに検証を中心とした実験的検討を進め、目標達成を試みる。さらに密着強度の改善を目指し、樹脂との親和性の高いニッケルを銅に続いて界面に析出させ、複合化による改善を図る。
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Causes of Carryover |
初年度は、樹脂構造を制御したフィルムを用いて各種電気化学条件と膜の析出速度の相関を検討したところ、当初計画における予想以上に早く電極反応条件を確立することができた。そのため、使用した試薬量は当初計画をやや下回ることとなり、各主因子パラメータ抽出のために計画していた試薬購入費に余剰分が生じたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は界面構造の観察と析出形態の定量的評価を行う。その中で、樹脂と金属薄膜との密着力改善を図る新たな方策として、ニッケルをスペーサーとして用いることを新たに計画している。前年度未使用学はこのニッケル塩の試薬購入および断面観察用のダイヤモンドナイフの購入に充てる予定である。
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Research Products
(15 results)