2014 Fiscal Year Annual Research Report
外的要因により核生成制御された高品質シリコン太陽電池の創成と原料循環プロセス開発
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26289281
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 広郁 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90264069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 一人 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50404017)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結晶成長 / ファセット成長 / 双晶 / 金属生産工学 / 電子・電気材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
多結晶シリコン(Si)インゴットは太陽電池素材として最も多く生産されているが発電効率及び生産性効率の向上に限界が生じており,Siインゴット及びウエハの品質改善が冶金学的見地から求められている.一方,近年Si原料の枯渇問題及び加工工程における切削くず処理が問題として浮上している.そこで本研究では①核生成制御による高効率大型シリコン太陽電池及び②Si加工粉末再利用太陽電池の製造システム構築の指針を得ることを目標とした. 平成26年度は大規模結晶の育成を主たる研究に位置づけて計画を遂行した.離型剤の種類を変えて核生成を制御した実験と高周波振動装置を組み合わせて融液成長を制御した実験をそれぞれ行った.まず母材に11Nの高純度Siを用いて種々の窒化珪素離型剤をるつぼ底部に塗布し,核生成に及ぼす窒化珪素離型材の効果を調査した.電気抵抗型方向凝固炉でアルゴン(Ar)雰囲気下において,1K/mmの温度勾配,0.002~0.01mm/sの凝固速度でSiを一方向凝固させ組織を解析したところ,過冷度が最も大きいるつぼ底部周辺からSiの核生成・成長が生じ,窒化珪素離型剤の塗布方法により結晶サイズが大きく変化することを見出した.また,成長方向はるつぼ周辺から内部に向かって成長する様子がより明確になった. 一方,Si結晶は不純物濃度が太陽電池の効率に大きく影響するので合金添加が制限されていることから,外部から振動を付与して結晶形態及び粒径に及ぼす振動の影響についても調査した.同様に電気抵抗型方向凝固炉でアルゴン(Ar)雰囲気下において,振動数150Hz及び 38000Hzで凝固途中のSi融液に振動を与えたところ,結晶粒径は振動数に大きく依存することが明らかとなった.この原因につていては現在調査中であるが,核生成および液相内流動等の影響が大きいと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多結晶シリコン(Si)インゴットを用いた太陽電池の発電効率は結晶粒径及び不純物濃度に大きく依存する.そこで,平成26年度は大規模結晶の育成を主たる研究に位置づけて計画を遂行した.これまで,20mmサイズの小型るつぼを用いた実験においては窒化珪素離型剤の種類により結晶粒径が変化することを調査していたが,本年度は80mmサイズの比較的大型試料への適応を試みた.窒化珪素離型剤の混合方法及び塗布方法を系統的に変化させ詳細に調査したところ,るつぼ周辺を基本として帯状に窒化珪素離型剤を塗り分けることにより,結晶核発生場所を特定できることを明らかにした.一方では窒化珪素離型剤の混合方法を変えてみたが,混合による組織改善効果は得られなかった. 続いて不純物濃度及び合金添加が大きく制限されているSi結晶に対して外部からの振動付与による結晶形態制御について調査したところ,振動数150Hz~38000Hzの範囲においてSi融液への振動の付与は結晶粒径の改善にはプラスにもマイナスにも作用し,振動数に大きく依存することが明らかとなった. 以上のように,予想できない結果も生じているが,計画通りに得られた成果も含めて,よりSi結晶制御に関する条件及びパラメータの幅を広げることができたことから当初の計画以上に進展していると判断した.但し今後は,得られた実験条件でより結晶形態制御に適切な条件を見出す必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も大規模結晶の育成を主たる研究として計画を遂行する.申請者らのこれまでの成果に基づき,離型剤の種類を変えて核生成を制御した実験と高周波振動装置を組み合わせて融液成長を制御した実験を行い大規模結晶の作製を目指す.まずるつぼ底部での窒化珪素の塗布位置を系統的に変化させ,得られる結晶粒径の影響を調査する.シリコンはファセット成長するが,特定の優先成長方位に沿って大きく成長する傾向があり,窒化珪素塗布場所と結晶成長の過冷度との関連性を詳細に調査する. また,結晶成長に及ぼす振動の影響については,結晶Siを模擬した透明有機物を用い,モデル実験として成長界面のその場可視化実験も行う. 一方,高純度Si粒子の薄膜化についても調査を行う.目的とする製品厚さは0.15mmであるので,0.05~0.1mmに分布する市販の高純度Si粒子を用いる.マイクロ粒子溶融法については,これまでの成果より,Si粒子のサイズは揃っているほど均一に溶融されるが,その表面性状は凝固界面の温度勾配,および溶融Si/電極基板間との濡れ性に大きく影響する.そこで,既存のYAGレーザのビーム近傍を予熱し,基板内の温度勾配を制御した状態でSi粒子を溶解用ビームで溶融・凝固させ,適正な膜厚と膜性状を得る.得られた試料については微小部結晶方位解析装置により成長方位を解析し,凝固条件及びレーザ照射条件の最適値を見出す. さらに,Si切削くずの処理を目的として懸濁液内に分布するSi粒子の分離に関する予備調査を行う.実際のSi切削屑を想定して溶媒には切削油等を加えた懸濁液とし,金属Siと不純物粒子を混合させSi粒子の回収割合を評価する.Si結晶成長に関する以上の研究成果は,国内外で発表を行うと共に学会誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
多結晶シリコン(Si)インゴットを用いた太陽電池の発電効率は結晶粒径及び不純物濃度に大きく依存するが,これらの因子と発電効率を明確にしておくことは極めて重要である.本研究の当初の予定では,インゴット及び薄膜等の試作太陽電池モジュールの光-電気変換効率の評価は平成27年度に計画していたが,平成26年度に得られた成果のうち結晶粒径が粗大に成長した試料の特性を評価する必要が生じた.そこで,平成27年度購入予定のソーラシミュレータを平成26年度に購入し,一方,薄膜化プロセスとして必要とされるYAGレーザ分岐ユニットを平成27年度に購入することとした.しかしながら,本ユニットは高価であり,平成26年度を費用をわずかに残して平成27年度分と合わせて購入することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はSiインゴット作製とともにSi薄膜化プロセスの制御を行う予定である.マイクロ粒子溶融法については,これまでの成果より,Si粒子のサイズは揃っているほど均一に溶融されるが,その表面性状は凝固界面の温度勾配,および溶融Si/電極基板間との濡れ性に大きく影響する.そこで,既存のYAGレーザの出力ビーム数を2つに増やし,基板予熱および温度勾配制御用のビームとSi粒子の溶解用のビームで適正な膜厚と膜性状を得る.購入予定のYAGレーザ分岐ユニットは装置同様メカトロジャパン製で,型式CFC-40S-75200-AR-R1,単価2445千円を予定している.
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