2016 Fiscal Year Annual Research Report
外的要因により核生成制御された高品質シリコン太陽電池の創成と原料循環プロセス開発
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26289281
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 広郁 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90264069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 一人 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50404017)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結晶成長 / ファセット / 双晶 / 金属生産工学 / 電子・電気材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽電池素材としての多結晶シリコンインゴットは発電効率及び生産性効率向上の面から冶金学的な品質改善が要求され,また,シリコン原料の枯渇問題及び加工工程における切削くず処理も問題とされている.本研究では①核生成制御による高効率大型シリコン太陽電池及び②シリコン加工粉末再利用太陽電池の製造システム構築の指針を得ることを目標として研究を遂行している. 平成28年度は主としてシリコン組織形成機構に及ぼす外的要因の影響について調査した.まず,シリコン塊及び粉末を溶解した後の結晶成長について,振動による核生成制御を試みた.核生成直後において38kHzの高周波及び200Hzの低周波振動をアルミナ保護管を介して溶融シリコンに印加し,得られた組織を解析した.高周波振動を付与した場合は結晶シリコンの粒子径が小さくなり,結晶界面面積が増加する結果となった.これは一般金属で生ずるキャビテーションを起因とする微細化効果がファセット系結晶であるシリコンについても同じように生じたためと考えられた.一方,低周波振動を付与した場合では,結晶が粗大化する結果が得られた.離型材の制御は行っていないため,粗大化の原因としては,融液過冷後に生じた核が低周波振動及び対流等で消滅または移動したことが考えられた. そこで,シリコンと同様のファセット系結晶透明有機物を用い,一方向凝固における振動の影響についてその場観察により,粗大化の原因を調査した.その結果,凝固及び振動付与中における温度の詳細な測定と凝固速度,凝固潜熱の解析から振動によりわずかに対流が変化することを見出した.ファセット系結晶は結晶方位異方性が強く,わずかな温度分布・過冷度により優先成長結晶が選択されることが知られているが,振動は間接的に対流を変化させることにより,ひいては結晶粗大化に寄与することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,平成27年度で得られた初期凝固組織形成過程と平行しながら,外的要因を積極的に与え,融液内の核生成近傍及び初期凝固領域における成長駆動力への影響について,過冷度との関連で詳細に調査した.シリコンの一方向凝固については,温度勾配に支配されると考えられていたが,低周波振動による対流の二次効果により,過冷度を変化させ,優先成長方位をもつ結晶の粗大化を寄与していることが明らかとなった.また,低周波振動の影響をファセット系透明有機物結晶でその場観察する技術も確立し,シリコンの一方向凝固実験と整合性を取ることで,ファセット系結晶の一方向凝固機構を明確にできたことは大きな成果と考えられる. 一方,切削シリコン粉末の再利用プロセスの予備調査として行ったファセット系合金の粉末製造プロセス実験においては,粉末製造の原理を理解するとともに,粉末を基板に製膜することにより,製膜の条件,得られる結晶の大きさ,ミクロ偏析,形態に関する情報を得ることができた.細かい結晶として十数ミクロンのものが得られ,光起電力との関連性を調査する必要があると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は大規模結晶の育成研究と,平成28年度で得られたシリコン粒子製造メカニズム及び切削シリコン粒子の再利用プロセスを総合に組み合わせた研究を遂行する.平成27年度に得られた離型剤の選択,及び平成28年度に得られた低周波振動効果を組み合わせることにより,大規模結晶組織を有するシリコンインゴットの製造プロセスの最適化を図る. また,平成27年度で用いたYAGレーザで予熱基板のシリコン粒子の溶解及び温度勾配制御した凝固実験を行う.平成28年度で得られたシリコン粒子を種種の基板に塗布し,パルス幅,レーザ出力を制御しながら基板全体及び局部的に温度分布を付与し,一方向凝固の最適条件を見出す.また,得られたシリコン薄膜組織は組織観察および結晶成長方位解析を行う. さらに,シリコン切削粒子をバッチ処理で分離させ,得られるシリコン粒子の表面を塩酸,硫酸等の薬品で除去した後,マイクロ粒子溶融法により薄膜化を行う.切削粒子は大型Siインゴットから得られるのでB添加試料はインゴット試料と同様にP型半導体となっている可能性が高い.従って,昨年同様,得られた薄膜試料の組織解析を行うと共に太陽電池モジュールの光-電気変換効率の評価を行う.凝固条件,結晶成長速度,後処理等,総合的に判断して結晶育成技術へフィードバックをかけ,以上の調査で得られた成果を国内外で発表する.
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Causes of Carryover |
シリコンマイクロ粒子の製造と薄膜化の最適化のためには,シリコン粒子近傍の雰囲気制御が極めて重要である.シリコンの熱応力を低減させるためには,溶融状態から室温までの冷却をゆるやかにする必要があるが,平成28年度の成果を踏まえて,赤外線及び電気抵抗発熱体の温度分布を修正する必要が生じ,設計することとした.また,粒子分級装置についても修正をする必要があり,設計を含めて次年度に充てることとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
赤外線及び電気抵抗発熱体を基本構成とした高温雰囲気制御装置の設計及び購入に充てる.さらに,粒子の分級の装置も改良する必要があり,差額はすべて装置の改良に充てる予定である.
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