2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26289306
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関根 泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20302771)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素製造 / 電場触媒反応 / 低温水蒸気改質 / in-situIR / DRIFTS |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒層に電場を印加し低温で反応を進める電場触媒反応をメタンの水蒸気改質に適応した。その結果、本来熱のみでは反応が進行しない低温域である150度程度でも十分に高い活性が発現することを見出した。そこで、メタン水蒸気改質への電場印加効果を明らかにすべく速度論的観点から検討を行ってきた。これらの結果を受け、in-situ IRによって触媒表面上の吸着種を観測し電場印加効果を詳細に検討した。 触媒は1 wt% Pd/CeO2を用いた。 in-situ IR測定は、拡散反射(DRIFTS)法により行い、触媒100 mgを7 mmφのディスクとしたものを用いた。同等の転化率を示す温度として、電場触媒反応において473 K、通常の触媒反応において673 Kで実験を行った。メタンと水蒸気を供給しながら、電場を印加してin-situで拡散反射IRスペクトルを測定した。得られたスペクトルをクベルカムンク変換し解析を行った。 触媒反応と電場触媒反応のIRスペクトルを比較すると、電場印加に伴いCH4に由来する波数3016,1304 cm-1のピーク強度が大幅に増加した。電場によりCH4の解離吸着が促進され、このCH4に由来する吸着種の吸着量が増加し、活性が大幅に向上したと考えられる。また、同等の転化率を示す673 Kにおける通常の触媒反応と473 Kにおける電場触媒反応のスペクトルを比較すると、通常の触媒反応ではH2Oに由来するOH吸着種を表す波数が3649 cm-1なのに対し、電場触媒反応では3627 cm-1と低波数側にピークが検出された。これは、電場触媒反応では結合状態の弱い電場特有のOH吸着種が存在していることを表している。この電場特有の吸着種が反応を促進することで、本来活性が発現しない低温域での反応が可能となったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界で始めて、電場触媒反応の表面吸着種の変化をダイレクトに追うことができるようになり、活きた状態の触媒表面への電場の影響を明確に捉えることが出来た。今後、電場の印加が反応機構にどのような影響をもたらすかを更に検討することで、低温での触媒反応の学理解明と応用に大きな道を拓くこととなる。
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Strategy for Future Research Activity |
電場印加中のメタン解離吸着を引き起こす要因として,強電界によるメタン分子の対称性崩壊あるいは電場印加に伴った金属の電子状態変化の2つが考えられる。電場を形成している際の応答電圧値(V)が約0.2 kV,電極間距離(d)が1.1 mmであることから,触媒層に印加されている平均電界強度(E)はおよそ1.8×10^5 V m-1と算出できる。また触媒の粒子間空隙などでは,電気力線が集中し,平均電界強度にくらべ強い電界が局所的にかかっていると想定される。そのような強電界中では,正四面体構造を有す安定なメタン分子がわずかなCとHの電気陰性度差に起因してその分子構造が歪み触媒表面上に解離吸着しやすくなる可能性が考えられる。この電界中におけるメタン分子の歪みを,計算化学によるシミュレーションと気相in-situIR測定より検証したい。様々な電界強度中におけるメタン分子の構造変化の理論計算と,メタンのみを供給し電場を印加した際の気相in-situIR測定を通じ,電場印加中のメタン分子構造の変化を検討し,電場印加に伴うメタン分子の構造変化と解離吸着促進との因果関係について明らかにする。併せて,電場印加に伴う電子は,金属の電子状態を変化させている可能性がある。金属の電子プール状態形成・仕事関数変化などが考えられる。これらの変化を捉えるには,電場印加中での金属電子状態を測定することが不可欠であり,in-situ軟X線吸収発光分析により担持金属の電子状態変化を測定する。光源に軟X線を用いることで金属のより外殻(d,f軌道)の情報を得ることが可能となる。より外殻の知見を得ることは,触媒活性とリンクさせる上で重要である。電場印加の有無で得られるスペクトルを比較し金属の電子状態変化を検討することで,メタン解離吸着との因果関係を明らかにする。 これらを通じて,電場中での低温触媒反応の作用がクリをより明らかにし,役立つプロセスに資するものとする。
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Causes of Carryover |
次年度額として1662円を繰り越したい。1662円の範囲では研究に有用な器材の調達ができず、無理に安価なものを購入して帳尻を合わせるより、次年度に繰り越して研究に有用な器材の購入に充当したほうが、税金を財源とする研究費の有効活用に良いと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬やガスなどの調達において、繰り越した額(1662円)を加えて有効に活用する。
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Research Products
(15 results)