2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26289306
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関根 泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20302771)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタン / 電場 / 触媒反応 / イオン伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炭化水素の代表であるメタンの水蒸気改質に対し、直流定電流を印加することで電場を形成する反応場を適応し低温域において高活性化を目指してきた。特に、電場を印加することで原料・触媒に与える影響を検討することを本研究の目的とし、電場印加時の反応機構・伝導機構の詳細な検討を行ってきた。CeO2やCe1-xZrxO2を担体としたM/CeO2, M/Ce1-xZrxO2系触媒(M = Pd, Pt, Rh and Ni)が電場印加中において、熱のみでは反応が進行し得ない低温域でも活性が発現することを見出した。特に、Zrの置換量が大きくなるほど(xの値が大きくなるほど)高活性を示し、Rh/Ce0.25Zr0.75O2において最大250 Kの低温化に成功した。また、本系の活性は電気的因子である電流や電力に依存することがわかっている他、反応時の電流電圧特性がオーム則に反した特異的な挙動であることもわかっている。これらの電気的因子が及ぼす活性向上の詳細な検討までは至っておらず、電流電圧特性も解明されていない。しかし、Pd/CeO2を触媒に用いた際の反応中の触媒表面分析(in-situ IR)よりプロトンがキャリアとなり水を介して伝導するプロトン伝導を示唆する束縛回転振動が観測された。本系の伝導機構の1つが表面でのプロトン伝導の可能性があり、このプロトン伝導が特異的な電流電圧特性の要因である可能性が見出された。また、速度論的解析から、電場印加中の活性は水分圧に大きく依存していることがわかった他、高温ほどその依存度は大きくなる。既述のin-situ IR測定から、電場印加時のみ生成するOH吸着種の存在もわかっており、この水に由来するOH種が反応の活性向上に寄与し低温化を可能にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初想定していなかった全く新しい概念・学理である、「表面イオン伝導による反応促進」という概念を見出すことが出来、さらにその一般化によって応用展開が大きく拡がる可能性が出た。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで、速度論的検討を通して低温での表面分析であるin-situ IR測定を行ってきた。電場を印加した際にメタンの吸着を促進することが活性発現の必要条件であると考えられる。そこで、メタンに関する電場印加中のin-situ operando FT-IR測定による分析を行う。また、表面に依存した電子状態を準大気圧下で観測できるXPSをin-situ、Operando で行いたい。 また、表面吸着種を介したプロトン伝導を赤外スペクトル以外のキャラクタリゼーションで明らかにしたい。H2Oによる水素結合ネットワークを介して起こるGrotthuss機構によるプロトン伝導は、伝導の見かけ活性化エネルギーが従来の電子伝導・イオン伝導と比較して低いことがわかっている。そこで交流インピーダンス測定を通じて表面成分の伝導を抽出し、表面伝導を明らかにする。また、同位体D2Oを用いることで伝導の活性化エネルギーが増大する同位体効果や水分圧依存性を検討することで伝導に関する知見を得たいと考えている。交流インピーダンス測定で用いるサンプルは各成分の抵抗値を正確に区別するために高密度の焼結体を用いる。伝導と活性の相関を検討するためには担体であるCeO2に金属を担持したPd/CeO2(通常用いている触媒)による交流インピーダンス測定を行う必要がある。そこで、CeO2でのインピーダンス測定が確立したのちはPdを担持した状態のサンプルの交流インピーダンス測定を試みたい。一般的に金属を担持するだけで密度が減少するだけでなく、抵抗成分が多くなり測定は難しい。これは今まで例のない考えだが、検討する価値はあると考えている。 以上の吸着活性化過程、伝導機構を元に本系における電場印加中での表面での詳細な挙動をモデル化し今後の電場触媒反応における学理解明を進めたい。。
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Causes of Carryover |
4007円という些少な額が残り、研究を遂行する上で必要な物品を購入するには中途半端な金額であったため、あえて使いきらず次年度に回すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度における試薬の調達などに、当初の予算に4007円を加えて、有効に用いる。
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Research Products
(7 results)