2015 Fiscal Year Annual Research Report
バイオシリカ工学に基づく有用珪藻の革新的な物質生産プロセスの創成
Project/Area Number |
26289309
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 剛 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20345333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 知子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30409750)
真山 茂樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40199914)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオシリカ工学 / 珪藻 / 珪殻 / 有用物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、油滴肥大Phaseと葉緑体肥大phaseが制御可能な有用珪藻Fistulifera solarisをホストとして用い、その細胞を覆う珪殻の物性を改変する”バイオシリカ工学”を確立することで、脂質やタンパク質、生理活性物質の生産を効率化する新たな物質生産プロセスを提案する。 平成27年度では凝集性タンパク質のバイオシリカ表面上へのディスプレイ技術の確立について研究を行った。Fistulifera solarisのゲノム情報からバイオシリカ表面に発現する可能性のある候補タンパク質を複数同定し、緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合試験により、その局在を確認した。その結果、Frustulin1を足場として用いた時、ほぼ全ての細胞においてバイオシリカ表面にGFPをディスプレイできることを確かめた。そこで、Frustulin1にシリカ結合ペプチドを融合発現し、得られた形質転換株の培養液にシリカ粒子を添加した。その結果、細胞の凝集・沈降を誘起することに成功した。本手法において、シリカ粒子は凝集剤としてのみならず、珪藻の培養コストの大きな部分を占めるシリコン源としても機能する。このことから、本研究の成果は珪藻株を用いた低コストな有用物質生産プロセスを提案できるものであると考えられる。 更に、油滴内における生理活性物質の生産を目指し、高度不飽和脂肪酸の生産量の評価を行った。その結果、Fistulifera solaris内において、他の藻類と比較しても多い高度不飽和脂肪酸の蓄積が確認され、高度不飽和脂肪酸生産ホストとしての有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度において、有用珪藻Fistulifera solarisの珪殻タンパク質を同定し、バイオシリカ改質による効率的な細胞回収技術を開発することができた。本技術は珪藻珪殻の物性を改変することにより高効率な物質生産プロセスを構築する“バイオシリカ工学”の中核を担う技術である。特に、微細藻類を用いたバイオ燃料生産においては、従来、細胞を培養液から回収するプロセスに遠心分離法などが用いられ、多大なエネルギーを消費しており、実用化の大きな障壁の一つとなっていた。このことから、効率的な新規細胞回収技術を確立することができた意義は大きいと考えられる。更に油滴内における高度不飽和脂肪酸の生産にも着手し、一定の成果を得ることができた。本研究で開発した細胞回収技術は、高度不飽和脂肪酸生産プロセスにも適用可能である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、遺伝子組み換え技術や培養条件の検討などにより、Fistulifera solarisを用いた機能性物質(油脂(トリグリセリド)、高度不飽和脂肪酸、機能性脂質誘導体、フコキサンチンなど)生産手法を確立し、その生産量の定量評価を行う。さらに、珪殻タンパク質の改変株や欠損株の作出を行うことで、細胞回収後のバイオシリカ破砕効率を向上させ、機能性物質の分離を容易にするための方法についても検討を行う。以上のようにして作出しプロセスを組み合わせ、有用物質生産・細胞回収・物質回収のトータルプロセスを設計し、その有効性を評価する。
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