2014 Fiscal Year Annual Research Report
高機能化タンパク質ナノスフィアによるがん細胞ターゲッティング
Project/Area Number |
26289310
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畠 英理 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00225484)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | バイオテクノロジー / 蛋白質 / 生体分子 / ナノバイオ / 生体機能利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体適合性、生分解性、生体吸収性等に優れるタンパク質のみを構成成分として、粒径がナノメートルスケールで精密に制御され、かつ安定な構造を有する高機能化タンパク質ナノスフィアを設計・構築し、これをキャリアとして用いてがん細胞をターゲッティングするドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することを目的とする。 1. タンパク質の設計および発現・精製:ナノスフィアの基本構造となるタンパク質は、(AVGVP)nとポリアスパラギン酸(Dm)を遺伝子工学的に連結して構築した。 2.粒子形成能評価:作製したタンパク質が、加温により形成する粒子を動的光散乱(DLS)、および透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した結果、粒径50nm程度の安定なナノ粒子を形成することが明らかとなった。 3.蛍光物質による粒子内部の状態変化観察:周囲の環境から極性溶媒が減少する、あるいは蛍光物質の動きが制限されると蛍光を発する環境応答型の蛍光物質を使用して、温度による(AVGVP)nDm内部の変化を観察した。その結果、(AVGVP)n部位が疎水性コアを有する粒子を形成することが示された。 4.タンパク質内部への疎水性分子取り込みの基礎的評価:DDSへの応用の可能性を探るため、疎水性低分子化合物がタンパク質内部に取り込まれるかどうかを、疎水性蛍光プローブ1-anilinonaphthalene-8-sulfonic acid(1,8-ANS)を用いて評価した。その結果、粒子形成に伴う疎水性分子の取り込みが確認され、DDSへの応用の可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究は、タンパク質の設計・合成を行い、その粒子形成能を評価し、蛍光分子の取り込みを利用してDDSへの応用の可能性を探ることを目的として行った。 その結果、以下の事項が達成できた。1.目的タンパク質の分子設計とその遺伝子工学的合成、2.加温によるタンパク質ナノ粒子の形成、3.タンパク質ナノ粒子の疎水性コア形成、4.タンパク質ナノ粒子の疎水性コアへの疎水性分子の取り込み。 これらの結果より、作製したタンパク質ナノ粒子がDDSの担体として利用できる可能性が示され、当初の目的を達成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られたタンパク質ナノ粒子の特性を詳細に評価するとともに、ナノ粒子の多機能化を行う。 1.タンパク質ナノ粒子をがん細胞に対して特異的にデリバリするため、EGFやRGD等の分子認識機能部位をナノ粒子表面に導入し、そのターゲッティング特性を評価する。 2.抗がん剤を内包したタンパク質粒子を作製し、殺細胞効果について評価する。 3.タンパク質ナノ粒子が細胞内に取り込まれた後の動態を制御するため、粒子表面にシグナルペプチド配列を導入する。 以上により、がん細胞をターゲットとするDDSキャリアとしての可能性を追求する。
|
Causes of Carryover |
当初の予定通り、タンパク質ナノスフィアの基本構造となるタンパク質の設計・合成を行った。(AVGVP)nとポリアスパラギン酸(Dm)の融合タンパク質を、nとmの値を変化させることにより種々合成した。そしてこれらの基本特性を評価したところ、粒子径、粒子安定性、ゼータ電位等の様々な性質をn、mにより制御可能であることを新たに見出した。この発見は、今後のタンパク質ナノスフィアの構築において、非常に有用かつ重要であるため最優先して研究を進め、当初の研究計画の一部を次年度に行うことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に予定していた、タンパク質ナノスフィア内部の状態変化の蛍光物質による観察、およびナノスフィア内部への疎水性分子の取り込み評価実験の一部については、上記理由により生じた次年度使用助成金により遂行する。また、がん細胞を標的としたナノ粒子設計、構築、評価に関する研究について、当初の予定通り請求研究費により実行する。
|