2016 Fiscal Year Annual Research Report
高機能化タンパク質ナノスフィアによるがん細胞ターゲッティング
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26289310
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小畠 英理 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (00225484)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / タンパク質 / 生体分子 / ナノバイオ / 生体機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究では、がん細胞への特異的送達を行うために、表面にEGF (Epidermal Growth Factor)を提示し、かつ薬剤を内包したナノナノスフィアを設計・構築し、EGFレセプターを過剰発現しているがん細胞を殺傷できることを明らかにした。しかし、がん細胞表面に特異的に発現する抗原や過剰発現する抗原は、EGFレセプターに限らずトランスフェリンレセプターやCD19、CD20など様々な分子があり、またがん組織ごとにその発現抗原や発現量は異なる。したがって、がん細胞ターゲティング能を有する表面分子を容易に挿げ替えることができるナノスフィアを作製できれば、ターゲットとする細胞・組織に応じた汎用性の高い薬剤送達システムが実現できる。そこで本年度は以下のナノスフィアを構築し、その評価を行った。 1.抗体結合タンパク質提示タンパク質ナノスフィア:抗体結合タンパク質を表面提示したタンパク質ナノ粒子を構築できれば、抗体分子を挿げ替えることにより、様々ながん細胞を標的とするナノ粒子を構築することができる。そこで抗体結合タンパク質とナノ粒子を形成するタンパク質との融合タンパク質を作製し、表面に抗体結合能を賦与したナノ粒子を構築した。この抗体提示ナノ粒子が抗原結合能を有していることを明らかにした。 2. DNAアプタマー提示タンパク質ナノスフィア:がん細胞のターゲティングには抗体同様DNAアプタマーも有効な分子である。そこで当研究室で開発したDNAを特異的に結合できるGeneAタンパク質を提示したナノ粒子を構築した。このナノ粒子は、GeneAを介して任意のDNA表面提示できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、高機能化タンパク質ナノスフィアを設計・構築し、これをキャリアとして用いてがん細胞をターゲッティングするドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発することを目的としている。現在までの進捗状況は以下の通りである。 抗体結合タンパク質を表面に提示したタンパク質ナノスフィアを構築し、ナノスフィアに抗体結合能を付与することに成功した。 DNA結合タンパク質を表面に提示したタンパク質ナノスフィアを構築し、ナノスフィアに任意のDNAを提示することに成功した。 以上のように、当初の目標をほぼ達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した種々の高機能化タンパク質ナノスフィアを用いて、それぞれの分子認識能を詳細に評価する。抗体結合タンパク質提示ナノスフィアについては、その表面にがん細胞表面に特異的に発現する分子を認識する抗体を結合する。これを用いてがん細胞へのターゲッティング能を評価する。さらに、ナノスフィア内部に抗がん剤を内包し、がん細胞に対する特異的殺傷能について調べる。一方、DNA結合タンパク質提示タンパク質ナノスフィアについては、提示したGeneAを介してがん細胞表面に特異的に発現する分子を認識するアプタマーDNAを結合する。そして前述の抗体結合タンパク質提示ナノスフィアの場合と同様、がん細胞へのターゲッティング能、および薬剤内包ナノスフィアによるがん細胞特異的殺傷能について調べる。 以上により、本研究で構築する高機能タンパク質ナノスフィアの有用性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画の通り、薬剤を内包したナノスフィアをがん細胞特異的に配送するために、ナノスフィア表面に分子認識機能部位として抗体分子を導入した。これに加え、当研究室で開発したタンパク質‐DNAハイブリッド分子作製法を利用して、DNAアプタマーを利用した薬剤送達実験を追加して行うため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金は、今年度の研究計画を滞りなく遂行するために使用する。
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