2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞模倣膜2次元・3次元ダイナミクスの解析、設計と制御
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26289311
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (00183434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 相分離 / リポソーム / コレステロール / 荷電脂質 / 流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜は,様々な種類の脂質分子を含む二分子膜構造によって構成され,膜面には飽和脂質とコレステロールの多い領域(相分離ドメイン,ラフトドメイン)が存在するとされている.ラフトの性質や形成メカニズムに関する研究は中性脂質を中心に行われてきた.しかし,一般的に生体膜は多くの負に帯電したリン脂質を含んでおり,その静電的な効果が相分離に及ぼす影響は明らかになっていない. 本研究では,不飽和脂質,飽和脂質,コレステロールの3成分[負荷電不飽和脂質(DOPG)/中性飽和脂質(DPPC)/コレステロール(Chol),中性不飽和脂質(DOPC)負荷電飽和脂質(DPPG)/Chol,DOPG/DPPG/Chol]を混合し,静置水和法を用いてサンプルを作成した.膜表面電荷を負荷電脂質の混合比で調節し,膜構造(膜表面の相分離ドメイン)を共焦点レーザー顕微鏡により観察した. 負荷電脂質PGを含まないDOPC/DPPC/Cholの系では,液体秩序(Lo)相と液体無秩序(Ld)相が共存し,Cholは飽和脂質を多く含むLo相に局在する.Cholの局在に注目すると,中性飽和脂質(DPPC)を負荷電飽和脂質(DPPG)に変えたDOPC/DPPG/CholではDOPC-richな相に,中性不飽和脂質(DOPC)を負荷電不飽和脂質(DOPG)に変えたDOPG/DPPC/CholではDOPG-richな相に,両方を負荷電脂質にしたDOPG/DPPG/CholではDOPG-richな相にCholが局在することがわかった.これより,Cholの局在のしやすさはDOPG>DPPC>DOPC>DPPGの順であることを見出した. このコレステロールの局在のし易さをLaurdanによる流動性測定,FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)による拡散係数測定により考察した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
荷電脂質に関する相分離構造の情報は、きわめて限られており、新しい知見が得られている。海外の一流雑誌にも論文が掲載され、学会発表等も積極的に行っており、予定通りに進んでいると言ってよいと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次の2点について、重点的に研究を行う。(1)細胞の信号伝達に目を向けると、神経細胞におけるシナプス小胞に代表されるような、小胞輸送を基盤としたミクロ空間外への物質輸送が、情報伝達において重要な役割を担っていることが理解できる。我々は既に、空間内部に向けての小胞形成について報告している(J.Phys.Chem.B 2007)。膜脂質の電荷やタンパク質との相互作用によって、小胞形成の方向を空間外へと操れる可能性についても検討を続行し、アミロイドペプチド等の小胞輸送メカニズムを解析している。そこで、空間相互の情報交換を小胞輸送を介して可能とするような、「ミクロ空間・情伝達システム」の基盤技術を開発する。(2)蛍光観察や原子間力顕微鏡(AFM)、さらにはその組み合わせにより、モデル膜系の研究から提案された生細胞膜における相分離構造について検証する。既に予備的な実験は行っている。Jurkat細胞のラフト領域をコレラ毒Bサブユニット(CTB)で可視化した場合、免疫系を活性化するレクチンであるコンカナバリンAで処理すると、ラフトの集積が認められ、濃い蛍光像が観察できる。しかし、細胞膜中のコレステロールをメチルβシクロデキストリンで除いた細胞では、ラフトの集積が観察できない。低コレステロール状態は、モデル膜ではSo相を形成している状態が考えられ、この結果は、生きた細胞の相分離状態に複数のパターンが存在する可能性を示唆している。 そこで、コレステロールの含量、種類などが生細胞膜の相分離構造に与える影響と、物質相互作用について解析を実施する予定である。
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Research Products
(29 results)