2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞模倣膜2次元・3次元ダイナミクスの解析、設計と制御
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26289311
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (00183434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞膜 / ラフト / リポソーム / 相分離 / ダイナミクス / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
【細胞系】細胞膜には、飽和脂質やコレステロールを豊富に含むラフト領域が存在し、信号伝達に重要であると考えられている。T細胞を活性化するレクチン(ConA)存在下では、ラフトが膜上で集積後、細胞骨格を介して内部へ集積することから、T細胞活性化には、ラフトと細胞骨格が重要と考えた。冷感剤メントールは、温度変化なしで冷感を引き起こす。そこでT細胞を例にラフト集積機構の温度依存性とメントールの影響について調べた。ラフトの細胞内部への集積が観察は、27℃以下ではラフトのみが集積し、27℃以上ではアクチンとラフトが細胞内部の同じ場所に集積した。メントール存在下では、27℃以上でラフトが集積し、アクチンとラフトは共存していた。低温(<27℃)でのラフトのみの安定性に依存した集積と、高温(≧27℃)でのアクチンも関与した集積の2種類があると考えられた。メントール存在下では、アクチンがラフトの安定性により低温でも関与いると考えられた。 【人工細胞系】上述した細胞膜のダイナミクスに関して、2次元的(相分離構造)、3次元的(形態変化)ダイナミクスに分類して、研究を進めている。特にこれまでの人工細胞系では、2重膜の内外層の組成が同じ、対象膜を用いていたが、組成の異なる非対象膜を用いて、特に相分離構造の安定性について、検討を行った。対称組成リポソームと比べると相分離が起きにくいことから、外膜と内膜の相互作用が相分離形成を促していると考えられる結果が得られた。さらに脂質組成が非対称なリポソームの観察では、外膜が不飽和脂質よりも飽和脂質のときの方が,相分離がよく観察されることがわかった。内膜に形成される飽和脂質に富んだ領域が外膜に同じ飽和脂質が存在するときに安定化されること(chain interdigitation)を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞系、人工細胞系の双方について、着実に目標が達成できている。両者のデータを総合する事により、分子レベルでの相互作用に関する理解が深まりつつある。現在、電場を加えたエマルジョンやリポソームの移動、融合現象に関して、予備的な実験系の構築が進みつつある。これらの状況を勘案して、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の信号伝達に目を向けると、神経細胞におけるシナプス小胞に代表されるような、小胞輸送を基盤としたミクロ空間外への物質輸送が、情報伝達において重要な役割を担っていることが理解できる。アミロイドペプチド等の小胞輸送メカニズムを解析し、神経細胞毒性の発現機構を理解すると同時に、小胞形成に必要な脂質組成について、考察を実行細胞系からの結果を参考に行う。 また、「ラフト仮説」は、極めて魅力的であり、多くの膜受容体やイオンチャネルが、ラフトを介して信号伝達を行っているという研究例が報告されている。人工細胞系の相分離構造を調べると、5種類(Spinodal(縞状), Rough(歪形), Smooth(円形), Reverse(反転), No domain(一様))の相分離構造に大別できる。しかし、細胞生理学的には「ラフト」は1種類のみが想定されている。この細胞系と人工細胞系における、相分離構造に関する理解のギャップを埋めるべく、生きた細胞の相分離構造について、精査する。
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