2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナイロン加水分解酵素の分子設計と産業応用への基盤研究
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26289317
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
根来 誠司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90156159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40236443)
加藤 太一郎 鹿児島大学, 理学部, 助教 (60423901)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナイロン / 加水分解酵素 / 熱安定性 / サブユニット / 立体構造 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイロン工業副産物の6アミノカプロン酸オリゴマーを加水分解する酵素(ナイロン加水分解酵素)NylCについて、酵素の高機能化を実現し、産業応用への展開を試みるものである。応用化に当たって、酵素の安定化が重要であり、これまで、耐熱性が親酵素より36℃上昇した変異体を取得しているが、一方、不安定化する現象も確認されている。そこで、本年度は、免疫分析および、MDシミュレーションによるNylCの細胞内での挙動について検討した。まず、NylCの安定性特性について、部位特異的変異導入法により作成した変異体を用いて検討した。AD界面上に位置する122位および137位変異体の安定性機能を調べたところ、Gly122, Val122, Lys122, Arg122の4種の変異体において、親型p2-NylCから熱安定性の向上が確認できた。さらに、ADサブユニット界面に位置するLys159とGlu115のX線結晶構造からの残基間距離において、Tm値が上昇した変異体では、距離が近接していく傾向が見られた。一方で、137位の置換体では、親型からTm値が11℃減少し、さらに122位変異体の中でもPro122, His122, Trp122の変異体では、イオン交換クロマトチャートにてタンパクのピークが出ないなど、不安定化した変異体も同時に取得することが確認できた。さらに、G122Y130A36Q263変異体は、親型p2-NylCに対して、AD、AB両界面に位置する4箇所にアミノ酸に置換を有し、最も高いTm値を示す。代表的変異体の超遠心分析の結果から、変異により会合状態はテトラマーからモノマーまで変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究から、ナイロン加水分解酵素NylCのサブユニット界面で変異が耐熱性に大きく影響すると予想できている。そこで、この仮説を検証するため、サブユニットAB界面上に位置する着目部位について、部位特異的変異導入を行い、取得した変異体に対して免疫分析および、RT-PCRを行った。また、RT-PCRによる遺伝子発現量算出から、mRNAの合成を確認した。例えば、得られた変異体GYAQ-Q299D, GYAQ-Q299Eでは、大腸菌破砕後の可溶画分のSDS-PAGEにて、NylC由来のタンパクが確認できなかったことから、不安定型の変異体に対してGYAQに対する相対発現量を求めたところ、mRNAの合成は正常に行われていると判断することができた。次に免疫分析による変異体の会合状態を調べたところ、変異体種により、異なることがわかった。変異体を会合状態で分類したところ、1) 可溶画分に活性型として存在、2) 可溶画分に前駆体型として存在、3) 沈殿画分に前駆体型として存在、4) 可溶画分にフラグメントのみが存在の4種類の挙動を取ることがわかった。NylC変異体の挙動をMDシミュレーションにて解析を行った。まず、PDBファイルの情報を基に、変異体の分子モデルを作成し、122位変異体のADサブユニット間距離の測定について距離計算を行ったところ、X線結晶構造解析の結果と、MDシミュレーションの結果が良い相関を示すことが判明し、シミュレーションによる推定が妥当であることを示した。この結果から、サブユニット間の不安定化から、タンパク全体の不安定化のつながり、フラグメント化が進行したと推測した。以上のことから、NylCは数アミノ酸の置換でその会合状態や挙動が大きく異なることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質の状態は、モノマー間の不適切な会合による不溶性凝集体の形成することから、変異体の中には、細胞内で分解を受け、フラグメント化が進行すると推定できている。従って、タンパク側の改良として、今回、新たに導入したMDシミュレーションを、次年度以降、活用していく必要があると考えている。特に、常温域(30℃)と高温側(70-100℃)でのシミュレーションを同時に実施し、高温側で、タンパク質のどの領域が大きく揺らぐのかについて検討する。また、タンパク質分子全体の挙動をとらえることができるようなツールを用いることで、安定性と機能向上につながる部位の選定を試みる。得られた知見を元に、有効な部位を特定し、酵素の高機能化と安定化を達成する予定である。
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Causes of Carryover |
助成金の直接経費の中で、34,974円について、次年度使用額が生じた。これは、3月末に納入予定の受託合成基質の年度内納入が、困難となったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、平成28年度の予算と合わせて使用する。上記の基質合成は次年度予算の中で処理する。
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Research Products
(6 results)