2014 Fiscal Year Annual Research Report
実海域波浪環境下で優れた耐空・耐航性能を有する地面効果翼機の開発
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26289333
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩下 英嗣 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60223393)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地面効果翼 / 自由表面 / 境界要素法 / 風洞実験 / 水槽実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、地面効果翼に作用する定常空力および非定常空力を推定する計算法を確立している。この方法は、ポテンシャル理論と2次元CFD計算を組み合わせた特徴ある方法である。三次元ポテンシャル理論に基づく境界要素法により三次元翼に作用する揚力、抗力を求め、各翼断面に作用する揚力と同じ揚力を発生する2次元CFD計算値から2次元翼断面の迎角を求める。この迎角における抗力を摩擦抗力として境界要素法で得られている抗力(誘導抗力)と加え合わせることにより全抗力とする。2次元CFD計算値はレイノルズ数、迎角に関してデータベース化しておき、それを補間して使用する。 上記計算法の検証を行うために、水槽試験を実施している。試験においては、地面板上に作用する圧力分布を計測するために、耐水性の圧力ゲージを埋め込んだ地面板を製作し、水中約1mの深度に水平に設置した。翼模型をこの地面板上で曳航することで、地面板上の定常圧力分布のみならず、非定常圧力分布の計測にも成功している。これらのデータは世界初のデータとなる。非定常圧力分布の計測においては、船舶まわりの非定常波形を計測・解析する手法を応用しており、翼進行方向に並べた6本の圧力ゲージにより、進行軸に沿う非定常圧力分布を精度良く計測できる。 得られた計測データと別途風洞試験で得られた結果は、翼の空力レベルで良好な一致を示しており、上記理論計算法が簡便で有効な手法であることが確認できた。また圧力分布に関しても極めて良好な推定が行えることが示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究の達成度はほぼ100%と言ってよい。地面効果翼の空力推定法の確立と、その実験との比較による検証からは、当初予想以上の成果が得られている。風洞試験と水槽試験結果同士を比較することで、風洞試験における境界層影響の混入に関し、20mm程度の境界層厚みであれば翼空力の計測値に影響を及ぼさないこと、また水槽試験における模型深度を1m程度に確保すれば計測値に自由表面影響がほとんど混入しないことなど、今後の研究における実験ノウハウに関する重要事項が付随的に明確になっている。得られた結果については多くの学会講演会等で発表しており、高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、地面効果内で稼動する翼の風洞模型試験を行い翼表面圧力分布の計測を行う。高性能圧力ゲージ32個を埋め込んだ風洞試験模型を3Dプリンターを利用して製作し、地面効果内の翼表面に作用する圧力分布を計測することで、地面効果による圧力レベルの影響を調べるとともに、昨年度までに構築した理論推定法の推定精度を検証する。地面効果内の翼表面の圧力分布を計測した例はこれまでに存在せず、これも学術的に貴重なデータとなる。 過去の研究を通じて、推進器のマウントが機体全体の空力性能に顕著な影響を与えることが分かってきている。地面効果翼機の実際の飛行シミュレーションを精度良く行うにはその影響を考慮する必要がある。そこで、推進器をマウントしない場合とマウントした場合とで全機模型の風洞試験を実施し、その干渉の度合いを定量的に把握する。一方で推進器の単独性能をポテンシャル理論ベースに推定し、風洞試験結果と比較することで理論推定精度について調査する。続いて理論計算から推進器周りの流場を計算し、それを全機解析時の境界条件に反映させることで、推進器稼動時の全機空力性能の推定を可能とする。
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Research Products
(7 results)