2014 Fiscal Year Annual Research Report
トカマクプラズマにおける高速イオン駆動低周波不安定性の運動論的解析
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26289356
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福山 淳 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60116499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 計算物理 / トカマクプラズマ / 固有モード |
Outline of Annual Research Achievements |
1. トカマク統合モデリングコードTASKには,平衡,輸送,波動,NBI,速度分布関数等の解析モジュールが組み込まれている.本研究の固有モード解析においては,比較的長波長の波動伝播吸収解析に用いられているTASK/WMを利用する.このモジュールは,トロイダル方向とポロイダル方向にはフーリエ分解を使用し,径方向には有限要素法を用いることによって,マクスウェル方程式を空間的には境界値問題として,時間的には複素周波数に対する固有値問題として解いている.今年度は,まず行列方程式解法の並列化に取り組み,アルヴェン固有モード解析の高速化を実現した.さらに,固有値探索ルーチンの並列化にも取り組み,処理速度を向上させた. 2. ドリフト波やイオン音波との結合,磁気ドリフト運動や有限ラーモア半径効果を取り入れるため,ジャイロ運動論方程式から出発して,任意の平衡速度分布関数について,捕捉粒子と通過粒子に対する誘電率テンソルの定式化を行った. 3. 前項で導出したジャイロ運動論的誘電率テンソルをマクスウェル速度分布に適用し,波動伝播解析モジュールTASK/WMに実装し,従来の解析との比較を試みた. 4. 速度分布関数解析モジュールTASK/FPの整備を行い,非線形衝突拡散項の精度向上やルジャンドル展開による核融合反応項の計算の高速化を図り,高速イオンの粒子輸送を含めた時間発展解析が容易に行えるようになった. 5. ジャイロ運動論に基づく準線形速度拡散テンソルの定式化を行い,準線形速度拡散による運動エネルギー増大率が,ジャイロ運動論的誘電率テンソルを用いた線形分散関係から導かれる線形減衰率と一致することを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.トカマク統合モデリングコード TASK の波動伝播解析モジュール TASK/WM の高速化を実現するために,行列方程式並列化解法ライブラリ PETSc を導入し,他の並列化された TASK モジュールと同様の手法を用いて,高速化を実現した.また,行列方程式以外の並列化可能部分である固有値探索処理についても並列化を導入した.これによって,当初予定していた以上の高速化が実現した. 2.ジャイロ運動論的誘電率テンソルの導出にあたっては,従来の解析手法をベースにプラズマの応答を誘電率テンソルの形で表すことができ,当初の目的を達成した. 3.マクスウェル速度分布に対するジャイロ運動論的誘電率テンソルの TASK/WM への実装は行ったが,従来の解析との比較は十分には進めることができなかった.平成27年度前半に実施する予定である. 4.速度分布関数解析モジュールについては,空間輸送項の実装や核融合反応率計算の効率化を実現し,予定通りの進展が得られている. 5.ジャイロ運動論における準線形拡散係数の導出ならびに線形減衰率との比較も,予定通り進展してる.
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Strategy for Future Research Activity |
1. マクスウェル速度分布関数に対するジャイロ運動論的誘電率テンソルを用いて,トカマクプラズマにおける低周波モードの線形安定性解析を行い,従来の解析と比較してモジュールの検証を行う. 2. 一般には一つのプラズマ配位に対して多数の固有モードが存在する. これらの固有モードを検出し,最も成長率の高いモードを自動的に探しだすルーチンを作成し,解析の高速化を図る. 3. 任意の速度分布関数に対して,速度空間の数値積分によりジャイロ運動論的誘電率テンソルを求めるモジュールを作成し,加熱や電流駆動によって変形された速度分布関数に対して,低周波モードの安定性を解析する. 4. 波動解析と速度分布解析を組み合わせることにより,NBIやイオンサイクロトロン波を用いた高速イオンの制御により,抵抗性壁モードや内部キンクモードの成長率がどのように変化するかを調べ,それらを抑制あるいは抑止する手法の開発を行う.
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Causes of Carryover |
補助金および助成金の3年間の総額が申請額から減額されたため,平成27年度から2年間採用予定の特定研究員の給与に不足が生じないよう,平成26年度の助成金からの支出を制限した.主に旅費の節約を行い,研究の進展には大きな影響を与えないようにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,平成27年度交付決定額(補助金 260万円,助成金 200万円)に繰越額 80万円を加え,総額 540 万円の内,物品費 10万円,旅費 100万円,人件費 410万円,その他 20 万円を予定している.
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