2016 Fiscal Year Annual Research Report
金属の水腐食によるトリチウムの取り込み・透過機構の解明
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26289364
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大塚 哲平 近畿大学, 理工学部, 准教授 (80315118)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トリチウム / 純鉄 / 酸化物分散強化型ステンレス鋼 / 透過 / 腐食 / 還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、室温付近の低温度領域(30度~80度)においてトリチウム水を保管・貯蔵または輸送する際に、金属の水腐食により発生したトリチウムがどのように水/金属表面から取り込まれ、透過するのか、その取り込みから透過にいたるまでの機構を明らかにすることである。これまでに、ジーベルツ則が成り立つものとして約1/100気圧の圧力(フガシティ)に相当する水素が水腐食により純鉄に溶解することや、金属/水界面においてトリチウムの透過が約1/2500に抑制されることを明らかにしてきた。 金属/水界面におけるトリチウム移行挙動を把握するうえで、金属から透過してきたトリチウムが金属表面を通って水素分子状で放出されるか、または水分子状で放出されるかは重要である。本年度は、金属から透過してきたトリチウムの透過放出化学形を分析するためのシステムをトリチウム透過実験装置に導入し、室温から400度の広い温度範囲において、純鉄および酸化物分散強化型(ODS)ステンレス鋼からアルゴン気流中へのトリチウム透過挙動を調べた。この結果、純鉄とODS鋼ではトリチウム透過フラックスが同程度であるにも関わらず、透過放出されたトリチウムの化学形態は、純鉄では主に水分子状であるのに対し、ODS鋼では主に水素分子状であることがわかった。これは、純鉄表面酸化膜が透過水素(トリチウム)によって還元され、トリチウムが酸化されて水分子状で放出されたのに対し、ODS鋼ではクロム酸化物が比較的安定なので水素分子状のトリチウムが放出されたためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主因として、前任校(九州大学)から本学(近畿大学)に異動したことに伴い、新しい研究環境の構築・整備に時間がかかったことが挙げられる。近畿大学原子力研究所のトリチウム使用量は極めて低いため、研究期間内でのトリチウム利用実験の遂行は不可能であることがわかった。このため九州大学アイソトープ統合安全管理センターの利用を申請することにより、研究を継続して実施することができた。ただし、出張回数が限られたために、全ての研究計画を遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、九州大学アイソトープ統合安全管理センターおよび近畿大学原子力研究所RI実験棟を利用し、純鉄、ODS鋼およびS45C(実用鋼)についてトリチウム水中における腐食誘起トリチウム透過挙動を調べることにより、腐食によるトリチウム取り込み挙動に及ぼす鋼種の影響を明らかにする。また、本研究課題は最終年度であるので、これまでの研究成果を総括し、水/金属および金属/水界面におけるトリチウム(水素)移行モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
九州大学アイソトープ統合安全管理センターの外部利用には、実験室利用料金および廃棄物費用がかかる。本年度はセンターの利用が少なかったため、見込みよりも支出が少なかったために余剰が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
九州大学アイソトープ統合安全管理センターの外部利用料金として利用する。
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