2014 Fiscal Year Annual Research Report
再処理過程で自発的につくられる抽出錯体溶液の階層構造とそのダイナミクスの研究
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26289368
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
元川 竜平 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (50414579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40447313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バックエンド / 階層構造 / 再処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸トリブチルやモノアミド化合物はウランやプルトニウムと錯形成する代表的な有機配位子である。錯形成のためには溶液二相間分配(溶媒抽出法)を用いるのが一般的である。通常これらの配位子は有機相中に分散させて利用するが、本年度は有機相中におけるこれらの配位子のミクロ構造を明らかにする研究を行った。X線及び中性子小角散乱法を相補的に利用した溶液状態の観察を行った結果、これらの配位子は1分子で孤立して溶液中に分散してはおらず、2量体、或いはそれ以上の会合体を形成して存在することが明らかになった。会合体の形状は楕円状のものから円筒状のものまで様々であり、これらの構造が金属イオンとの錯形成に対してどのような影響を与えているかの考察を進めている。具体的には、分子動力学計算やDFT計算によるシミュレーションと散乱実験の結果を比較する作業をすすめている。計算科学による検討はマンチェスター大学からの協力を受けながら進めており、有機溶液中における配位子の存在状態を可視化しつつある。 また、放射性廃棄物中に含まれるセシウムイオンやランタノイド、マイナーアクチノイドと配位子がつくる錯体や、様々な分離材料と金属イオンが形成する複合構造も、本事業で明らかにされる錯体溶液のミクロ構造と比較をしながら考察を進めていく必要がある。その際の波及効果として、セシウムイオンと固体分離材料が溶液中でどのようなミクロ構造を形成しているかを明らかにすることに成功したためその成果を論文発表するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機溶液中で配位子がつくる会合構造を明らかにすることができた。X線及び中性子小角散乱実験が有効に機能している。中性子偏極解析技術をデータ解析に組み込むことにも成功しており、来年度以降は金属錯体のミクロ構造解析を発展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸トリブチルやモノアミド化合物と金属イオンがつくる錯体の配位構造について、その濃度依存性をオクタンやドデカン溶液中で明らかにする。実験はSPring-8に設置されるXAFS装置を用いて行う。これらの実験結果は分子動力学計算やDFT計算を用いて考察する予定である。また、中性子小角散乱法を用いた上記の錯体溶液の測定も行う。実験は原子力科学研究所内に建設されている大強度陽子加速器や米国オークリッジ国立研究所の中性子散乱施設に設置される分光器を用いる予定である。XAFS測定と中性子小角散乱測定の結果を相互に比較して考察することで、錯体溶液の階層構造に関する静的な構造を定性的に評価する。
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