2016 Fiscal Year Annual Research Report
再処理過程で自発的につくられる抽出錯体溶液の階層構造とそのダイナミクスの研究
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26289368
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究副主幹 (50414579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (40447313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第三相 / 抽出錯体 / 凝集 / 中性子小角散乱法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度までの研究により、溶液2相間分配系において第三相が生成する原因は複数の抽出錯体が数十ナノメートル程度の凝集体を形成し、それが成長していくためであることを解明している。これに対して本年度は、これらの凝集体が抽出錯体の親水部における水素結合ネットワークの形成による1次凝集体の構築と、この1次構造がファンデアワールス相互作用を介して相互作用することで高次の凝集体がつくられることが原因であることを明らかにした。これにより、第三相の生成を防ぐためには水素結合とファンデアワールス相互作用を制御した新規抽出剤・システム設計を行う必要があることを示すことができた。これらの結果は中性子小角散乱(SANS)法と広域X線吸収分光法によって得られた成果であるが、計算科学的な手法により詳細な水素結合状態、電子状態を明らかにする取り組みもマンチェスター大学との共同研究により推進した。これらの成果は1報の学術論文(J. Phys. Chem. B, 2016)としてまとめられた他、現在続報を投稿中である。さらに、抽出錯体溶液によって得られたSANSデータの信頼性を向上させるために中性子偏極解析法の導入が有用なことを示すことに成功した。この成果は中性子散乱実験において試料中の水素原子から発せられる非干渉性散乱成分を取り除く方法である。SANS実験において、この非干渉性散乱成分は干渉性散乱成分に対するノイズのように働いてしまうことが問題視されていたが、実際に非干渉性散乱成分をどのようにして取り除けば良いかを米国国立標準技術研究所(NIST)に設置される中性子スピンエコー装置を用いてデモンストレーションした。この成果も1報の学術論文(Solvent Extr. Ion Exch.)として掲載させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抽出錯体溶液のつくる階層構造をナノ-メソスケールで詳細に明らかにするとともに、分子動力学計算やDFT計算から分子レベルの構造と電子状態を明らかにする取り組みも進めている。論文執筆も順調にするんでおり来年度以降の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出錯体溶液中でつくられる1次・高次凝集体構造を形成する駆動力になる、水素結合ネットワークやファンデルワールス相互作用を分子レベルで可視化するとともに、それらの電子状態を明らかにする取り組みを行う。また、錯体の凝集構造のダイナミクスを明らかにすることを目的に中性子準弾性散乱測定を実施するための準備を行う。
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