2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳波と脳内血流量の同時計測に基づくエネルギー施策における個人の異質性の解明
Project/Area Number |
26289370
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 好邦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30302756)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 智彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30392591)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 近赤外分光分析法 / 脳血流 / 温熱環境 / 省エネルギー / 温冷感 / 快適感 / 酸素化ヘモグロビン / 空調 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間が環境に対して温冷感などを覚えるとき脳活動が生じる。これを計測すれば客観的評価ができる可能性がある。そこで、脳血流中の酸素化ヘモグロビン濃度の変化から脳活動を計測する近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy,NIRS)を用いることで、温熱感覚に関わる脳の反応機構を明らかにし、温冷感の客観的評価をおこなった。本研究ではその第一歩として、熱い/冷たいという温度感覚について脳活動との関係を明らかにした。男子学生8名を対象とした被験者を実験室内(室温約24.5℃、湿度約37%)で着席させ、頭部にNIRS計(島津製作所)を装着させた。プロトコルは20s(レスト)-20s(タスク)-20s(レスト)-20s(申告)を1セットとした。レスト時は何もせず安静状態、タスク時には右足甲に水を入れたビニール袋(水温は33℃・50℃・5℃の3種類)を接触させることで刺激を与え、申告時には温冷感(-3(冷たい)~+3(熱い)点の7段階)と快適感(0(快適)~3(不快)点の4段階)に対する主観的評価を申告させた。温熱刺激は33℃-50℃-5℃の順で計3周、合計で9セット実施した。NIRS計によって脳血流は44ch(前頭葉22ch、体性感覚野22ch)、同時に皮膚血流3ch(前頭左右、頸部)計測した。体温を体温計により実験の前後に計測、心拍数を心拍計により実験中同時計測した。50℃の熱い刺激時と5℃の冷たい刺激時にNIRS測定値の差分に異なる傾向が見られた。被験者申告の結果と合わせると、NIRS測定値の差分と温熱感申告の相関が高い結果を得た。快適感については差分を絶対値で見ると、相関係数は0.59となる。計測結果から、温度感覚をNIRS測定値の差分を用いた脳活動量から評価できる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における初年度の課題は、温熱環境下で被験者実験をおこない、脳活動の計測値と温熱快適性の関係を定量化することであった。初年度は温熱環境を計測する実験室、脳血流の計測機器などの実験準備を行い、計測機器をレンタルした2週間にわたる被験者実験においてデータを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、2年目以降に応用的な課題(熱中症対策のための温熱感計測、ならびに意識・脳活動・温熱快適性の相関分析)を想定していたが、初年度の計測結果の分析を行ったところ、温熱感と脳血流における酸素化ヘモグロビン濃度の変化の関係は非常にセンシティブであり、皮膚血流等の外部条件の影響を受けやすいことが判明した。そこで今年度は初年度と同様な実験を実施するとともに、脳波や心電計等の計測を追加することにより実質的な計測値を増やし、頑健かつ説得性のある結果を導くことを目標とする。 研究実行上の課題は、脳血流の計測機器の調達(レンタル)費用が高く、当初の申請額が減額となった影響で十分な実験量を確保することが困難なことがあげられる。この点については別途競争的研究費の申請などを行うことにより補完的に進めていく対応を予定している。
|
Causes of Carryover |
申請時の研究計画では、初年度にNIRS計測機器を物品費として購入することを予定して初年度の経費を厚めに申請したが、研究の過程でレンタルで対応することがよいことが判明したため、初年度の残額を、2年目以降のレンタル費用に充てることにしたことが次年度使用額が生じた理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主としてNIRS計測機器のレンタル費用に充てる予定である。
|
Research Products
(1 results)