2015 Fiscal Year Annual Research Report
ペロブスカイト構造酸化物の可逆な酸素脱挿入を正極反応として利用する金属-酸素電池
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26289371
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日比野 光宏 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 上席研究員 (20270910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 哲孝 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50181904)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二次電池 / 正極材料 / 酸素脱挿入化合物 / ペロブスカイト型酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにXRDを用いた詳細な構造解析やメスバウアー分光による鉄イオンの価数分析,また電気化学インピーダンス測定などを実施し反応経路に関する理解が進んた.これらの熱力学的および速度論的研究とともに,本電池システムの適用範囲の拡大を目ざした実験・研究としてアルミニウム負極を用いた場合の検討を行った.すなわち酸素脱挿入が可能なペロブスカイト型酸化物を正極活物質としてアルミニウム負極と組み合わせると、正極と電解質の界面でのアルミニウム酸化物生成反応を正極反応として利用した電池となり、Al3+の固体内拡散速度に依らない新しいアルミニウム電池となることが期待される。正極活物質としてペロブスカイト構造のCa0.5La0.5FeOx(以下CLFO,出発材料では酸素量x = 2.91(2))を用いた。電解液は、塩化アルミニウムのジノルマルプロピルスルホンとトルエンの混合溶液を用い,Al負極とともに2032型コインセルを作製し充放電測定を行った。放電初期(0-18 mAh/g)には大きく電圧が低下し、その後18-65 mAh/gの範囲で0.5 Vでプラトーが見られた後、再び65-75 mAh/gにかけて電圧が低下した。充電時には0.7 Vと1.1 Vにプラトーが見られた。XRD測定により,放電初期の電圧低下領域では,活物質の格子定数は増大し,格子定数から見積もられた酸素量はx=2.76(1)となっていた.18 mAh/gはCLFO1モル当たり0.13電子の移動であることから,この電気量で0.15(2)の酸素が引き抜かれたことが明らかとなった.酸素1つあたり約1.2電子を要したことから,過酸化物の生成が示唆された.安定な過酸化アルミニウムは存在しないので今後の詳細な検討が必要である.放電時の0.5 Vのプラトー領域,充電時のプラトー領域の反応も未解明であり,反応の可逆性も含めて今後詳細に調べる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の実施計画通り,XRDを用いた詳細な構造解析やメスバウアー分光を実施し,鉄イオンの価数分析などによる反応経路解析を進めた.さらに,適用範囲の拡大という目標においてはアルミニウム負極との組み合わせを実施した.正極活物質からの酸素脱離の確認および引き抜かれた酸素量と電気量との考察から,酸化物イオンとしてではなく過酸化物イオンとして引き抜かれたことが示唆された.これによって熱力学的・反応論的な考察が進んだ.すなわち,これまでリチウム系,ナトリウム系,またマグネシウム系において,いずれも電位が高い状況,すなわち放電初期には過酸化物生成を示唆する結果を得ており,過酸化物の報告がほとんどないアルミニウム系の場合においても同様であった.したがって,少なくとも電荷移動反応時には共通の反応で進むことが明らかとなった.以上のように,27年度には,実施計画に沿って,マグネシウム系の反応の解明に関した内容を含め,正極からの酸素の引き抜き,再挿入を利用する二次電池システムのアルミニウム系への拡大と,反応についての考察の進展,電池として用いるための課題を明らかにしており,当初の計画通り進展していると判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム系においても酸素脱挿入可能なペロブスカイト型酸化物を正極として放電,充電反応が進行した.反応については,放電初期での酸素の脱離が確認され,同時にこの反応で過酸化物生成が示唆されたが,現在のところ他の放電領域および充電領域の反応は未解明である.したがって,これらを明らかにすることを今後進める.また,これまでにナトリウム系では熱力学的な理由(放電初期および充電末期の超酸化物生成領域の電位よりも,過酸化物が分解して分子酸素を発生させる電位の方が低い.)によって期待される充電反応の前に酸素発生による過酸化ナトリウムが分解してしまい,可逆な充放電が阻害することが判明した.一方でリチウム系,マグネシウムで系ではそのようなことがなく期待できるが,マグネシウム系では電解質と反応しやすく安定性に課題がある.そこで,最終年度となる28年度には,本電池システムの実用性の観点から,最も期待されるリチウム系に重きを置いた研究を進める.実用性を考えると高容量化が必要であるが,これまでの研究から酸素の脱離反応は主に過酸化物生成によるものであり,酸素1原子あたり1個の電子移動である.そのため,鉄系ペロブスカイト型酸化物で最も軽量なCaFeO3を用いても容量として90 mAh/g程度となってしまう.したがって,高容量化のためには過酸化物から酸化物への可逆な還元が進むか,引き抜かれた酸素から酸化物が直接生成することが可能かどうかの検討が重要となる.したがって,熱力学的分析や,速度論的解析をこの観点から進め,また触媒利用についても調べ,本電池システムの今後の可能性を見極める.
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Improved Performance of Co-doped Li2O Cathodes for Lithium-peroxide Batteries using LiCoO2 as a Dopant Source2016
Author(s)
Hiroaki Kobayashi, Mitsuhiro Hibino, Yoshiyuki Ogasawara, Kazuya Yamaguchi, Tetsuichi Kudo, Shin-ichi Okuoka, Koji Yonehara, Hironobu Ono, Yasutaka Sumida, Masaharu Oshima, Noritaka Mizuno
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Journal Title
Journal of Power Souces
Volume: 306
Pages: 567-572
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Electrochemical Reactions and Cathode Properties of Fe-doped Li2O for the Hermetically Sealed Lithium Peroxide Battery2016
Author(s)
Kosuke Harada, Mitsuhiro Hibino, Hiroaki Kobayashi, Yoshiyuki Ogasawara, Shin-ichi Okuoka, Koji Yonehara, Hironobu Ono, Yasutaka Sumida, Kazuya Yamaguchi, Tetsuichi Kudo, Noritaka Mizuno
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Journal Title
Journal of Power Souces
Volume: 未確定
Pages: 未確定
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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