2016 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸脱炭酸酵素の遺伝子欠損マウスを用いたGABA神経伝達機構の研究
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26290002
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柳川 右千夫 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90202366)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GABA / GAD65 / GAD67 / ノックアウトマウス / テトラサイクリン発現システム |
Outline of Annual Research Achievements |
GABAは神経系の主要な抑制性伝達物質として覚醒、睡眠、概日リズムや学習、運動、感覚情報処理など脳の機能を構築する上で中心的役割を果たしている。GABAは、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD; GAD65とGAD67の2型存在)により合成され、小胞型GABAトランスポーター (VGAT)によりシナプス小胞に蓄積される。GAD65とGAD67は異なる遺伝子にコードされている。本研究では、GABA神経伝達機構、GABAニューロンの役割、GABA自体の役割、およびGAD65分子とGAD67分子の役割を明らかにすることを目的とする。 GAD67完全型ノックアウトマウスは出生日に全例致死であり、出生日以降の解析ができない。そこで、テトラサイクリン発現システムを利用した時期特異的GAD67ノックアウトマウスの作製を目指した。時期特異的GAD67ノックアウトマウスの作製には、GAD67-tTAノックインマウス(既に作製)とGAD67-tetノックインマウスが必要である。GAD67-tetマウスでは、キメラマウスと野生型マウスとを交配したが、産仔が得られなかった。そこで、体外受精を行い、産仔を得た。 脳におけるGAD65とGAD67の発現について種により違いがあるかどうかを検討した。2週齢、4週齢、8週齢のマウスとラットの大脳皮質と小脳の各サンプルについて、GAD65とGAD67の両者に反応する抗体を用いたウエスタンブロット法を行った。マウスとラットのそれぞれ対応するサンプルにおいてGAD全体のタンパク量に対するGAD65タンパク質が占める割合は、ラットの方がマウスよりも高かった。これらの結果を背景として、GAD65ノックアウトラット解析のための繁殖を行い、GAD67ノックアウトラット作製に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テトラサイクリン発現システムを利用した時期特異的GAD67ノックアウトマウスの作製に関して、GAD67-tetノックインマウスのキメラマウスと野生型マウスとを交配したが、産仔を得られず、当初の予定より時間がかかっている。 脳におけるGAD65とGAD67の発現量比についてマウスとラットで違いがあることを見出した。それに基づいて、GAD65ノックアウトラットの解析、GAD67ノックアウトラットの作製などに取り組んだ。また、これまでのデータを論文として報告するなど、進んだところもある。
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Strategy for Future Research Activity |
GAD67-tetノックインマウスについてキメラマウスから体外受精で産仔を得たので、ゲノタイピングを行い、第一世代のGAD67-tetノックインマウスを同定する。次に、GAD67-tTAノックインマウスとGAD67-tetノックインマウスとを交配し、時期特異的GAD67ノックアウトマウスを作製する。時期特異的GAD67ノックアウトマウスにおいて、ドキシサイクリン投与の有無でGAD67の発現がどのように変化するか分子生物学、生化学、組織学のレベルで解析する。一方、GAD65分子とGAD67分子の役割を明らかにする目的で、GAD65ノックアウトマウス、GAD67ノックアウトマウス、GAD65/GAD67ダブルノックアウトマウスにおける遺伝子発現や行動などについて引き続き検討する。また、GAD65ノックアウトラット、GAD67ノックアウトラットを解析し、GAD65ノックアウトマウス、GAD67ノックアウトマウスの表現型と比較検討する。
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Causes of Carryover |
GAD67-tetノックインマウスの作製について、キメラマウスから産仔を得るのに時間がかかり、当初の予定よりも遅れた。それに伴い、時期特異的GAD67ノックアウトマウスを解析するための分子生物学実験用の試薬、組織学的解析用の試薬、器具などの消耗品代が次年度に繰り越された。また、GAD65分子とGAD67分子の役割を明らかにするには、それぞれのノックアウトマウス、ノックアウトラットを詳細に解析する必要があり、そのための費用が次年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
時期特異的GAD67ノックアウトマウスを解析するための分子生物学実験用の試薬(制限酵素、ポリメラーゼなど)、組織学的解析用の試薬(1次抗体、2次抗体など)、器具などに使用する。また、時期特異的GAD67ノックアウトマウス作製や繁殖のための飼育費に使用する。それから、GAD65遺伝子、GAD67遺伝子のノックアウトマウス、ノックアウトラットを解析するための物品費、飼育費に使用する。研究をより高度に遂行するために学会参加や論文投稿に使用する。
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