2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26290008
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宇賀 貴紀 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50372933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タスクスイッチングというヒトも含めた霊長類特有の認知機能の分子メカニズムを解明するため、我々が独自に開発した「判断切り替え」の系をサルに適用し、NMDA受容体が判断の形成と切り替えのどの部分に作用しているのかを解明することを目標とする。 まず、認知機能障害モデルとしてよく用いられているケタミン低用量全身投与時の、タスクスイッチングの行動学的指標を定量化した。動きの方向、あるいは奥行きのどちらかを答えるタスクスイッチ課題を訓練したサルに、低用量(0.25~0.5mg/kg)のケタミンを全身投与し、投与前後の行動学的な変化を検証した。本研究では、スイッチ機能として、不要な情報による干渉の度合いを定量化したswitch ratio(SR)を用いた。不要な情報による干渉がなければSRが1に、不要な情報による干渉が大きく、必要な情報を正しく取り出せていない場合にはSRは0になる。 運動方向判断においては、ケタミン投与前はSRは0.902、つまり、不要な情報による干渉はほとんど見受けられなかった。しかし、ケタミン投与後にSRは0.759と低下し、不要な情報による干渉が増加していたことが検出できた。この際、必要な情報を用いた判断の精度には変化が見られなかった。 これらの結果は、ケタミンを低用量全身投与すると、不要な情報の排除が困難になることを示しており、NMDA受容体が、多様な情報の中から必要な情報のみを取り出すという認知機能に貢献することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めに提案した「ケタミン低濃度全身投与による判断切り替え能力低下の行動学的評価」は順調に進捗した。具体的には、タスクスイッチ課題を遂行中のサルにケタミンを低用量全身投与すると、不要な情報の排除が困難になることを定量的に解明できた。その結果、NMDA受容体が判断の形成と切り替えのどの部分に作用するのかの大まかな予測がついた。
本研究の成果を持って、次のステップである「神経活動を記録しながら各種NMDA受容体拮抗薬の作用を検証する」実験に進むことができる。よって、本研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に「ケタミン低濃度全身投与による判断切り替え能力低下の行動学的評価」を継続する。特に、反応時間のデータを定量的に解析できるよう、データ数を増やすことを目標とする。
第二に、次のステップとして、神経活動を記録しながら各種NMDA受容体拮抗薬の作用を検証する。行動学的な研究だけでは、脳のどこで、どのプロセスがケタミンによる影響を受けているのかがわからない。したがって、本タスクスイッチ課題の感覚情報を表現する大脳皮質MT野、判断を形成する仮定が表現されている大脳皮質LIP野から神経活動計測を行い、各種NMDA受容体拮抗薬の投与により、神経活動にどのような影響を与えるのかを検証する。全身投与と局所投与の両手法を相補的に活用する。
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Causes of Carryover |
本年度は各種NMDA受容体拮抗薬の局所注入を行わなかったため、注入器などの備品を整備は次年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬品の脳内局所注入に必要な備品を次年度にそろえる。
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