2015 Fiscal Year Annual Research Report
体性感覚系中枢神経回路の機能的改編による体部位情報の変容動態
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26290010
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
宮田 麻理子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70281631)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 視床 / 神経切断 / 神経回路改編 / 内側毛帯線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢神経損傷は脳内神経回路の改編をもたらす。この脳内回路の改編は幻肢痛や異所痛あるいはCRPS(複雑性局所疼痛症候群)などの病態基盤であると考えられているが、その改編動作原理は分かっていない。とりわけ皮質下での改編過程は不明な点が多い。臨床的には下腿を切断した幻肢痛患者において、視床における受容野は切断部にあるにもかかわらず、その受容野を刺激することによって幻肢が再現されており、このことからすでに視床において、入出力関係のミスマッチがおきており、回路の改編が予測されていた。最近、我々はマウスのヒゲ感覚神経の切断モデルをもちいて、ヒゲ感覚神経切断により、視床ヒゲ感覚領域 (V2 VPm核)における上行性支配様式が複数化すること、さらにその変化が1週間以内という時間軸で起こることを明らかにした[Takeuchi Y. et al. (2012) J Neurosci 32: 6917]。本研究では、ヒゲ感覚領域の内側毛体線維のみを蛍光タンパクで標識した遺伝子改変マウスを作成することにより、ヒゲ感覚神経 (V2) 損傷により新たに動員された神経線維が三叉神経核のヒゲ以外の領域や後索核といった部位に起因することを明らかにした。さらに神経損傷によりV2 VPm核の神経細胞が下顎領域 (V3) や背部に受容野を持つように変化することを発見した[Takeuchi Y. et al. submitted]。また、神経損傷群では、VPm核の神経細胞の活動様式がよりバースト様になっていることも明らかにした。これらの結果から、末梢神経損傷は視床レベルで大規模な体部位情報の改編と神経細胞をバースト様に活動させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、神経損傷をした上行性線維(内側毛帯)を特異的に蛍光タンパクでラベルした遺伝子改変マウスを確立し、その線維のリモデリングを見る事で、身体変容様式を明らかにすることを目的とした。A.遺伝子改変マウスを用いた特定体部位情報の可視化 我々は遺伝子改変マウスを作成し、三叉神経主知覚核の神経細胞の内、ヒゲ領域のみを選択的に可視化することに成功した。さらに、このマウスでは内側毛体線維、および視床VPm核での軸索終末もヒゲ領域が選択的に蛍光タンパク(td Tomato)で可視化されており、特定の体部位情報を形態学的に明らかにすることが可能となった。B.神経損傷後のマウス視床VPm核における体部位情報再構築の可視化次に、我々は三叉神経ヒゲ領域 (V2)の切断により三叉神経主知覚核ヒゲ領域(PrV2)由来の内側毛体線維が退縮し、PrV2以外の領域由来の線維が入り込むことを発見した。また、逆行性色素(CTB)をV2 VPm核領域に注入し、下顎領域 (V3) の三叉神経核や後索核由来の投射が存在することを明らかにした。 C.神経損傷後における、ヒゲ領域VPm核神経細胞の受容野再構築 続いて我々はin vivo実験によってヒゲ感覚入力が遮断された視床V2 VPm核の神経細胞の受容野を計測した。その結果、V2 VPm核の神経細胞はV2領域以外の体部位である下顎や背部に受容野を持つように変化しており、B項で示した形態学の結果と一致していた。一方で、ヒゲ感覚入力を遮断していない動物(コントロール群)では正常と同じく、受容野はV2領域に限局していた。さらに、神経切断を行った群のVPm核の神経細胞はコントロール群に比べ、バースト様発火を起こしやすくなっていた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず我々は神経損傷が脳内身体表現の変容を引き起こすことを視床において明らかにした。今後は、視床-大脳皮質間結合などのより高次回路においてどのような変容が起こっているのかを明らかにする。そのために現在、我々は新たな2つの手法を導入している。1つ目は内因性シグナルを用いた光学イメージング技術で、これにより大脳皮質の体部位マップを可視化できるようになった。2つ目は、新たな遺伝子改変マウスで、光遺伝学的手法を用いて、ヒゲ感覚領域由来の内側毛帯線維にのみ選択的にチャネルロドプシン (ChR2)を発現させた。これらの技術により損傷ネットワークのみを選択的に賦活化し、損傷神経から入力を受けていた感覚系大脳皮質の受容野変容動態を可視化することを目指している。また、体部位情報に関わるバイオマーカーを明らかにするため、変容の分子機構の解明にも挑戦する。
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Causes of Carryover |
実験に必要な抗体が輸入品であったため、納品に一ヶ月を要したため、次年度に繰り越して購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度4月に当該抗体は発注しており、納品次第迅速に実験に使用する予定である。
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[Presentation] Assembly of Neocortical Circuitry by FoxG1, a Gene Associated with Neurocognitive Disorders.2016
Author(s)
Miyoshi, G., Ueta, U., Osaki, H., Yagasaki, Y., Hanashima, C., Fishell, G., Miata, M
Organizer
the 93rd Annual Meeting of the Physiological Society of Japan
Place of Presentation
札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
Year and Date
2016-03-22 – 2016-03-24
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