2014 Fiscal Year Annual Research Report
酸性糖鎖による神経発生制御機構の解明 ーモルフォゲン活性調節を介してー
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26290027
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
池中 一裕 生理学研究所, 分子生理研究系, 教授 (00144527)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 / 発生分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類中枢神経系において多様な細胞が存在するが、これらがいかにして産生され、精巧な中枢神経系の構築を実現していくかについては不明な点が多い。発生期の脳や脊髄ではWntやShhといった形態形成因子(モルフォゲン)が分泌され、それらが濃度勾配を形成し、その濃度に応じて様々な細胞応答を引き起こす。その結果、領域特異的に様々な細胞種を生み出している。モルフォゲンの濃度勾配形成機構には、酸性糖鎖構造との結合が関与していることが考えられている。モルフォゲン機能のよく知られている脊髄を用い、発生期におけるモルフォゲンと酸性糖鎖の代表であるグリコサミノグリカン鎖の相互作用についてモルフォゲンの分布及びシグナリングへの影響に着目し解析した。これにより神経幹細胞の分化制御において酸性糖鎖がどのように関与しているか、その機序を明らかにする。 これまでにケラタン硫酸の欠損マウスで、1ドメインが腹側へシフトするだけでなく、2運動ニューロンの産生が亢進し、3オリゴデンドロサイトの分化が抑えられること、などを見出してきた。平成26年度はその他のヘパラン硫酸・コンドロイチン硫酸の変異マウス(sulfatase(sulf)1/2-KO, GalNAc(4,6)ST-1-KO)においても同様の解析を行い、ドメイン構造を評価した。GalNAc(4,6)ST-1-KOマウスにおいては野生型と比較して、有意な差は認められなかったが、sulf1/2-KOマウスにおいてはケラタン硫酸欠損マウスのように胎生12.5日でドメインの腹側へのシフトが認められた。また、オリゴデンドロサイト産生の遅れも同様に認められた。この結果は、ケラタン硫酸とヘパラン硫酸が相互作用してモルフォゲンの分布に影響を与えていることを示唆しており、新たな研究概念を提起している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにケラタン硫酸及びヘパラン硫酸脱硫酸化酵素の欠損マウスにおいてドメイン構造の腹側へのシフトやオリゴデンドロサイトの分化異常を明らかにしてきた。また、これらを制御する因子としてShhシグナリングに着目したところ、レポーター遺伝子であるPatched1の発現にも変化があることを見出した。よってケラタン硫酸やヘパラン硫酸がShhシグナリングに影響をもたらしていることを示唆した。また、sulf1, sulf2およびsulf1/2 double KOにおいて表現系があまり変わらないことから、sulf1/2は単純にヘパラン硫酸6位硫酸を切断するだけでないように考えられた。これら酵素の基質特異性をもう一度ハッキリとさせるために、高速液体クロマトグラフィーを用いたグリコサミノグリカン鎖の硫酸化度合いの違いを区別する分析法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き発生期の脊髄を用いて解析し、得られた表現系がどのようなメカニズムで起こっているか分子機構を解明する。Shhシグナリング変異マウス(Bromi mutant)の解析を行い、ケラタン硫酸やヘパラン硫酸といったグリコサミノグリカン鎖の分布や細胞分化等の表現系について解析を行う。また、前年度に高速液体クロマトグラフィーを用いたグリコサミノグリカン鎖の硫酸化度合いの違いを区別する分析法を確立したことから、発生期脊髄中に存在するグリコサミノグリカン鎖の組成について解析が可能となった。よってこの分析方法と様々なグリコサミノグリカン抗体(ケラタン硫酸; 5D4、ヘパラン硫酸; 10E4、コンドロイチン硫酸; CS-56)を用いた染色により脊髄におけるグリコサミノグリカンのマッピングを行う。これらの実験を通し発生期脊髄におけるモルフォゲンとグリコサミノグリカン鎖の相互作用を統合的に解析する。
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Causes of Carryover |
寄付金と合算して支払予定だった微生物学的モニタリング費の支払が4月になってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに微生物学的モニタリング費として支払処理済。
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Research Products
(5 results)