2014 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ヒト化マウスによるヒト免疫アレルギー疾患の再現
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26290034
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
高橋 武司 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (80335215)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト化マウス / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
NOGマウスにおいて抗原特異的IgE反応を誘導するため以下のプロジェクトを行っている。 ①NOGマウスに欠損するリンパ節の再構築:リンパ節起始細胞(LTi)の分化を調節する ROR-γt遺伝子の下流にγc遺伝子を配置したBACトランスジェニックマウスを作製した。B6遺伝背景のマウスでの作製となったために現在NOGマウスに戻し交配中である。scid,γc遺伝子を配置したBACトランスジェニックマウスを作製した。B6遺伝背景のマウスで両遺伝子欠損下においても目視可能なリンパ組織が鼠蹊部、膝下、傍大静脈などに再構築できることを確認している。パイエルパッチについては再構築を確認できていない。 ②FDCとヒトB細胞の相互作用の回復:FDCが産生するCXCL13ケモカイン遺伝子をヒトホモログに置換したBACトランスジェニックマウスを作製した。脾臓においてmRNAによる遺伝子発現を確認している。B6遺伝背景のマウスでの作製となったために現在NOGマウスに戻し交配中である。 ③外部T細胞レセプター(TCR)のレトロウイルスによる導入による抗原特異的免疫反応の誘導:ヒトアレルギー患者から単離したHLA-DR4拘束性のβラクトグロブリン(BLG)特異的TCR遺伝子をレトロウイルスによりヒト造血幹細胞(HSC)に導入した。このHSCをNOG HLA-DR4トランスジェニックマウスに移植することにより抗原特異的T細胞を多数保持するヒト化マウスを人為的に作出した。このマウスを BLGで免疫することにより抗原特異的なTh1反応の誘導を確認したが、Th2反応は誘導できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところマウス作製は順調に推移している。 NOG背景でのBACトランスジェニックの作製が技術的に達成できておらず、B6でのマウス作製となったため戻し交配に時間がかかっている。 ヒト化マウス内で外部ヒトTCR遺伝子をヒトHSCに導入することにより抗原特異的な反応の誘導が可能であることを示し、論文報告を行った。今後Th1反応が優位となる環境を如何にTh2反応に誘導するかについて検討したい。 一方、ヒト造血幹細胞の入手に困難が生じている。共同研究を行っていた病院から新鮮かつ十分量の臍帯血の提供を受けることができていない。今後は市販の造血幹細胞の購入により研究を進める方向であるが、HLAの適合が問題になる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の研究によりヒト化マウスの作製においてヒトHSCの移植生着性を制御する重要な遺伝子としてsirpαが報告されている。sirpαにはマウス系統間の多型が存在しており、NOD型で生着性が飛躍的に向上する。実際、B10系統でもsirpαがNOD型をもつコンジェニックマウスではヒトHSCが生着する。今後、本研究で作製したマウスを戻し交配する際にsirpαの多型に注目し、遺伝背景を完全に置換する前にヒトHSCを移植し、ヒト化が可能か検討し、マウスの特性を調べたい。 ヒトTh2反応を誘導するためのサイトカインとしてIL-4,TSLPなどの遺伝子が重要な役割を果たしている。これらを発現するマウスを作製する。また、ヒトT細胞のホメオスタシスを維持するために必要なヒトIL-7を発現するマウスの樹立を行った。このマウスの特性解析を行う。 HLAを適合したHSCの安定確保が困難であることが明らかになった。HLA適合のためにHLA-DR4遺伝子をウイルスによりHSCに導入する試みを行っているが、十分な発現量を得ることができていない。HLA適合を可能にする実験系の作出を行いたい。
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Causes of Carryover |
新規トランスジェニックマウスの作製にB6系統のマウスを用いたことから、1回のDNAインジェクションでマウス系統の樹立に成功した。このために、当初見込んでいた胚の作製費用を使用せずに済んだ。また、臍帯血由来の造血幹細胞の精製を行う予定であったが、共同研究を行う病院からの提供数が当初見込みを下回り、細胞精製用の試薬の購入費を使用しなかった。これらの理由で本来本年度に使用する予定にしていた予算を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
造血幹細胞を自前で精製することはかなり困難であることが判明したため、研究用細胞として販売されている造血幹細胞を購入する予定である。近年の研究の促進により幹細胞価格が大幅に高騰しており、もともと細胞の精製試薬を購入するために計上していた研究費の大半を幹細胞購入のために充てる予定である。また、NOGマウスでBACtgマウスを作製するための技術検討に必要な胚作製の費用を新たに計上する予定である。
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