2014 Fiscal Year Annual Research Report
大腸発がんの新規細胞モデルを用いた発がん分子機構解明と治療標的同定の統合的研究
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26290044
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 雅子 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 研究員 (90150200)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発がん / 3次元培養 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス腸管のオルガノイド3次元培養とレンチウイルスによる効率の高い遺伝子導入を組み合わせる事で、大腸多段階発がん過程を再現する細胞レベルのモデルを確立して以前報告した。すなわち、大腸がんの大多数で変異を来すAPC遺伝子のshRNAを用いた発現抑制によりWnt経路の活性化を達成し、APC変異マウスと同等の腫瘍形成能の再現に成功した。一方、APC欠失に非依存的な発がん経路も大腸がんでは報告されていることから、Kras活性化を誘導した後に、APC以外のがん抑制遺伝子の発現を抑制することで発がんが誘導可能か検討を行なった。その結果、Kras活性化単独では腫瘍形成の誘導は見られなかったが、p16など複数の遺伝子に対するshRNAの導入により腫瘍の形成が観察された。ただし、APCの発現抑制をした時と比較して腫瘍径は小さく、また異なる組織像を呈していた。以上より、APCに依存的な発がん経路以外でも本モデルで再現可能であることを確認した。そこで、大腸がんで変異が高頻度で認められながら遺伝子改変マウスが作成されていないため、大腸発がんへの寄与が直接は証明されていない遺伝子2個(APC同様のWnt経路の抑制因子およびクロマチンリモデリング因子)についてshRNAを用いて発現抑制を行い、Krasの活性化やAPCの抑制などど組み合わせる事で発がんへの寄与を検討した。現在、ヌードマウス皮下への移植による腫瘍形成能の評価を行なっているが、Wnt経路の抑制因子のノックダウンはAPCのノックダウンと比較して造腫瘍能は有意に低い傾向を示しており、慎重に実験を繰り返している。一方、クロマチンリモデリング因子に関してはAPCの抑制依存的な発がん経路を促進することを見出しており、個体レベルでの解析に先駆けて発がん性を確認することんび成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の途中で研究機関を異動したために、Kras変異マウスなどの一部の遺伝子改変マウスを用いた実験が一時期中断を余儀なくされて当初より進捗が遅れたが、本モデルの迅速性を生かして短期間で解析結果を出す事が可能になった。当初本モデルを開発した機関とは別の機関で異なる研究者が実験を行なっても同様の結果が出る事が確認された事から、実験系としてのrobustnessは明確に示されたと考えている。また、本モデルがAPC依存的な発がん経路に対してのみ有効なのではないかという当初の懸念に対しても明確に否定することができた。ただし、APC非依存的な発がん経路による発がん性はAPC依存的経路によるものと比較して顕著に弱く、臨床サンプルにおける両者の変異数が大きく異なる事と一致した結果と考えられ、本モデルの有用性を別の面からも証明したと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた、APCflox/floxマウス由来の腸管細胞を用いた検証についてはgenotypingの結果、開発者であるMITのラボにおいてもヘテロとホモの個体が区別不可能であることが判明したため、別の系統を新たに入手して用いて解析を行なうこととした。また、オルガノイドを3次元培養する際に、従来は正常細胞と同様にR-spondin1を添加していたが、APC発現抑制を行なった場合にはR-spondin1を添加しないで培養した方がWnt経路活性が高い細胞が濃縮され、腫瘍形成率も増加することを見出したため、同条件を用いて今後発がん性の検証の実験を行なって行く。また、APC発現抑制に伴い出現する風船状のオルガノイドに関して、Wnt経路の活性化以外の刺激でも風船状の形状を来す事を以前より見出していたが、両者の差を様々な点から検証しており、複数の遺伝子に関して発現レベルやスプライシング、活性化などに差があることを見出している。そのため、一般的には生理的とされる3次元オルガノイド培養だが、その特性と限界についても明らかにして行く事を視野に研究を進めて行く
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Causes of Carryover |
3月に博士研究員が療養のため3週間入院することとなり、その間に予定されていた実験に必要な物品の注文が滞り残額が発生したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3次元培養に用いるマトリゲルを2本購入することで4月中に使い切る予定としている。
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Research Products
(6 results)