2014 Fiscal Year Annual Research Report
メンデリアンランダマイゼーション法を用いた糖尿病とがんの因果関係評価のための研究
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26290046
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
津金 昌一郎 独立行政法人国立がん研究センター, がん予防・検診研究センター, がん予防・検診研究センター長 (40179982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 基 独立行政法人国立がん研究センター, がん予防・検診研究センター, 部長 (60392338)
後藤 温 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80644822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、高血糖曝露として糖尿病の既往に着目し、これまでの全ゲノム関連解析研究(GWAS)をレビューし、日本人においても関連が報告され、また比較的再現性がよいSNPsを31個選択した。これらを操作変数の候補として糖尿病既往とがん罹患リスクの関連を検討するために、がん罹患症例のSNPタイピングを開始した。今後も高血糖曝露としてHbA1c、空腹時血糖を対象とした解析や、C-peptide、HOMA2%B、HOMA2%Sなど指標とした解析を計画していることから、これらに関連するSNPsにも対応するために、ゲノム網羅的SNP解析を採用した。 すでにゲノム網羅的SNP解析の結果が整備されている、膵がんのコホート内症例対照研究(150症例と300対照)のデータを用いて、前述の31 SNPsを操作変数としたMendelian Randomization法による糖尿病既往と膵がん罹患リスクの関連について検討した。前述の31 SNPsのうち16 SNPsについてはSNP chipに搭載されていなかったため、Broad Instituteが提供するSNAPを利用し、proxy SNPsを選択した。しかし1 SNPについては適当なSNPが見つからず、またハーディー・ワインベルグ平衡のp値が有意な1SNPを除き、合計29 SNPsを対象にリスクアレルの個数によるgenetic risk scoreを作成した。 従来法による解析では、糖尿病の既往がない者を基準とした場合、既往者のオッズ比(95%信頼区間)は2.83(1.17-6.86)と統計学的に有意な関連が観察された。これは先行研究に一致する結果であったが、Mendelian Randomization法による解析ではp=0.85と有意な関連は見られなかった。これは糖尿病既往と膵がん罹患リスクの間の因果関係を否定する結果であった。サンプルサイズが小さいという問題はあるが、一方で、操作変数となるSNPsの選択法およびリスクスコアの作成方法についても改善の余地があり、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画は、日本人における高血糖曝露(糖尿病の有無、HbA1c、空腹時血糖)に関連するSNPsから操作変数を選択し、Mendelian Randomization法による高血糖曝露(糖尿病の有無、HbA1c、空腹時血糖)とがん罹患リスクの関連の検討することである。
本研究は、「多目的コホート研究(JPHC study)」(研究代表者 津金昌一郎)において収集・保管された試料・情報を用いる計画であるが、対象者約34,000人から層別ランダムサンプリングした約13,000人のサブコホート集団についてはゲノム網羅的SNP解析の情報があるものの、追跡期間中に約34,000人から新規にがん罹患が判明した約3700人の症例群については、一部の症例のみしかゲノム網羅的SNP解析の情報がないために新たにタイピングを開始した。次年度前半にはがん症例のタイピング情報が整備される予定である。
すでにゲノム網羅的SNP解析の結果が整備されている膵がんのコホート内症例対照研究(150症例と300対照)のデータを用いて、糖尿病を対象とした全ゲノム関連解析研究で明らかになったSNPsから選択した29 SNPsを操作変数として、Mendelian Randomization法による糖尿病既往と膵がん罹患リスクの関連について検討を行った。一連の解析を行うことにより、検討課題が明らかとなる一方で、実施可能性が担保されたことから、概ね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成26年度に引き続き、がん症例のSNP chipによるタイピングを行い、高血糖曝露に関連するSNPsを用いたMendelian Randomization法による高血糖曝露(糖尿病の有無、HbA1c、空腹時血糖)とがん罹患リスクの関連の検討を継続し、論文化を目指す。
(2)インスリン分泌・抵抗性(C-peptide、HOMA2%B、HOMA2%Sなど)に関連するSNPsの同定及び、それらのSNPsを用いたMendelian Randomization法によるインスリン分泌・抵抗性(C-peptide、HOMA2%B、HOMA2%Sなど)とがん罹患リスクの関連の検討
サブコホート約13,000人およびケース約3700人を対象にC-peptideおよび血糖の分析を行う。その結果からインスリン分泌および抵抗性の指標(HOMA2%B、HOMA2%Sなど)を算出し、先行するGWASによりインスリン分泌・抵抗性との関連が指摘されているSNPsについて、多目的コホート研究における再現性を確認する。同時にサブコホート約13,000人を対象としたGWASを行い、インスリン分泌・抵抗性に関連する新規SNPsの検討も行う。これらの検討によりMendelian Randomization法における操作変数の候補SNPs(50 SNPsを目途)を選択する。これらのSNPsを用いたMendelian Randomization法によるインスリン分泌・抵抗性(C-peptide、HOMA2%B、HOMA2%Sなど、それぞれについて検討)とがん罹患リスクの関連を検討する。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに使用したが、端数として661円が次年度に繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
端数として繰り越した額を含め、本来の計画通りに使用する。
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[Journal Article] Plasma insulin, C-peptide and blood glucose and the risk of gastric cancer: the Japan Public Health Center-based prospective study.2015
Author(s)
Hidaka A, Sasazuki S, Goto A, Sawada N, Shimazu T, Yamaji T, Iwasaki M, Inoue M, Noda M, Tajiri H, Tsugane S; JPHC Study Group.
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Journal Title
Int J Cancer
Volume: 136
Pages: 1402-10
DOI
Peer Reviewed
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