2015 Fiscal Year Annual Research Report
胆道・膵臓がん幹細胞のマイクロRNAとエピゲノム異常を標的とした診断・治療戦略
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26290049
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 義正 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (90360114)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 胆道がん / 膵臓がん / マイクロRNA / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究により、胆道・膵臓がんの手術検体から得られた組織を用いて、オルガノイド培養技術によりがん幹細胞を永続的に培養・維持することに成功した。現在、安定的に培養・維持出来る肝内胆管がんおよび膵臓がん由来のオルガノイドを合計で3例樹立した。培養条件としては、基本培地に加え、EGF, R-spondin 1, HGF, A83-01, Wnt3A, Noggin, FGF10, Forskolinなどを添加すると、胆道・膵臓がんオルガノイドを効率良く樹立出来ることが明らかになった。 樹立された胆道・膵臓がんオルガノイドにおける個々の症例に特異的なドライバー遺伝子変異、エピゲノム変異および遺伝子発現などを網羅的に解析したところ、特に少ない増殖因子で強い増殖活性を認める胆管がんオルガノイドにおいて、KRAS、TP53、TGFBR2の遺伝子変異を認めていた。また、マイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析の結果、オルガノイド培養を長期間継続していると、ゲノム全体のDNAメチル化レベルが低下し、がん抑制マイクロRNAの代表であるmiR-34aの発現が著明に低下していることが明らかになった。 樹立した肝内胆管がんオルガノイドに、GFPまたはpuromycin耐性遺伝子を含むレンチウイルスベクターにより、miR-34aを強制発現させたところ、胆管がんオルガノイドの増殖が著明に抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究により、肝内胆管がんおよび膵臓がん由来のオルガノイドを合計で3例樹立し、安定的に培養・維持している。オルガノイドを効率よく樹立できる培養条件も確立しつつあり、今後もより多くの胆道・膵臓がん組織を用いてオルガノイドを樹立する予定である。 さらに、マイクロRNAの網羅的な解析により、胆道がんの新たな治療標的としてmiR-34aが特定された。胆道がん由来のオルガノイドの樹立に関する報告はこれまでになく、その樹立方法や創薬標的としてのmiR-34aについては、新規性があり、産業上も価値が高いと考えられ、既にこの発明については、優先権主張出願を行った(特願2015-142164)。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロRNAは長さ21-25塩基程度の小さなノンコーディングRNAであり、非常に安定性が高く、がん細胞において著明な発現変化が認められるため、国内外で創薬の標的として大きな注目を集めている。マイクロRNAは元々生体内に存在するため、内在性のsiRNAとも考えられており、従来の外来性siRNAなどを用いた遺伝子治療よりも安全性の点で格段に優れている。さらに1つのマイクロRNAが複数の標的がん遺伝子を抑制するため、相乗的抗腫瘍効果が期待できる。 共同研究者の金澤らは、これまで外部環境に応答する機能性ポリマーを開発し、生分解性のポリ乳酸(PLA)ナノ粒子に応用したドラッグデリバリーシステム(DDS)に成功している。Lgr5、CD44、CD133などのがん幹細胞マーカーを標的としたリガンドを付与したナノキャリアを作製することで、より特異性の高い、効果的なDDS製剤が開発出来ることが期待される。 今後の研究では、個々の胆道・膵臓がん患者のがん組織より樹立されたオルガノイドを用いて、がん抑制マイクロRNAを内封したDDS製剤の効果を解析し、がん幹細胞を標的とした革新的な核酸医薬の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は胆道・膵臓がんの臨床サンプルを用いてオルガノイドを樹立する予定であったが、国立がん研究センターにおける研究倫理申請の承認に時間がかかったため、実際にオルガノイド培養を開始する時期が予定よりも遅れてしまった。結果的にオルガノイド培養に使用する試薬(マトリゲルや増殖因子など)の購入が予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に国立がん研究センターにおける研究倫理申請が承認されているため、次年度はより多くの胆道・膵臓がんの臨床サンプルを用いてオルガノイドを樹立する予定である。オルガノイド培養に使用する試薬も大幅に増加することが予想され、それらの消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)