2015 Fiscal Year Annual Research Report
外来生物の侵入による海洋島送粉生態系のレジームシフトとその進化・生態的影響
Project/Area Number |
26290073
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 英寿 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50305413)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 哲人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (00353558)
山本 節子 (鈴木節子) 国立研究開発法人 森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (70456622)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 海洋島 / 外来種 / 送粉生態系 / 繁殖 / 遺伝構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
小笠原諸島の送粉生態系ネットワークは、グリーンアノールなどの外来動物による在来送粉昆虫の捕食や、外来のセイヨウミツバチが在来植物に高頻度で訪花するなど、外来生物の影響によって大きく変貌しつつある。本研究は、在来送粉昆虫の減少・絶滅による在来植物の繁殖への影響と、在来植物における外来昆虫の送受粉効果や集団遺伝構造への影響を具体的に評価し、生物の生態的・進化的背景を考慮した保全施策に直接的に貢献することを目的とする。 平成27年度は前年度に引き続き外来種の影響を受けている有人島(父島と母島)と外来種の影響の少ない無人島(兄島・聟島)において、数種の在来植物を対象に訪花昆虫調査を行い、訪花昆虫相の島間比較を行った。その結果、ヒメフトモモは聟島では昼行性の在来小型ハナバチ類とハエ類が多数訪花していたのに対して、父島では在来小型ハナバチ類の訪花は全く見られず、セイヨウミツバチが頻繁に訪花していた。また、在来昆虫相が残存する兄島においても、在来ハナバチ類よりも高い頻度でセイヨウミツバチが訪花していた。一方、アカテツはいずれの島でもハエやカミキリモドキ・ガなどの夜行性昆虫が頻繁に訪花し、聟島では昼行性のハエ類が高頻度で訪花した。両植物種とも夜間よりも昼間の訪花者相が島間で大きく異なり、夜行性昆虫が昼行性のグリーンアノールの捕食圧を受けにくいことによると考えられる。 また、セイヨウミツバチと在来昆虫の受粉効果を比較するため、父島と聟島で採取したシマザクラの成木と種子集団の集団遺伝学的解析を行ったところ、遺伝的多様性や自殖率に島間で有意差はなく、訪花昆虫相の変化はシマザクラ集団の遺伝的多様性に影響を与えていない事が示唆された。また、父島では長距離の送粉が多く確認され、外来のセイヨウミツバチと在来のオガサワラクマバチが長距離の送粉を担っていると推測される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
兄島において外来のセイヨウミツバチと在来の小型ハナバチ類の体表花粉分析を行う予定だったが、H27年の調査ではヒメフトモモにはセイヨウミツバチしか訪花せず、在来小型ハナバチ類が全く採集できていない。またシマザクラでは訪花頻度が非常に低く、昆虫を採取することができなかった
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度はウラジロコムラサキを対象として、訪花昆虫の観察と採取を行い、体表花粉分析を行う。 また、これまでの調査で、母島では数年前まで頻繁に訪花していたセイヨウミツバチが全く見られなくなっていることが分かった。そこで、セイヨウミツバチがいる父島といない母島で、いくつかの植物種を対象として結実状況の比較調査を行う。
|
Research Products
(7 results)