2015 Fiscal Year Annual Research Report
mRNA前駆体の組織特異的転写後プロセシングの制御機構の解明
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26291003
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒柳 秀人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新生RNA / 線虫 / 組織特異性 / 転写後プロセシング |
Outline of Annual Research Achievements |
計画Aとして、TU-taggingによる線虫の生体における新生RNAの組織特異的な標識法と濃縮法の確立を目指していた。Ai)のT. gondiiのウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を体壁筋特異的または神経系特異的に発現する安定発現株の作製までは順調に進んだ。しかし、これらの株を用いて、4-チオウラシル(4TU)による新生RNAの代謝標識を試みたところ、T. gondii UPRTを発現していない野生型株でも4TUが5分間の短い標識で効率よく新生RNAに取り込まれてしまうことが明らかになった。 計画B,Cとして、Aで得たトランスジェニック線虫を用いて組織特異的に代謝標識した成熟mRNAの大規模シーケンス解析、新生RNAの経時変化の追跡を計画していた。しかし、上述のとおり野生型株背景では組織特異的にRNAを標識できていないことから、バックグラウンドの4TUの取り込みが低い変異体を探索することとした。これまでに、ウリジン一リン酸合成酵素をコードするumps-1の変異体を4TUで代謝標識したところ野生型株に比べて4TUのRNAへの取り込みが少なくなることを確認した。 計画Dとして、抗LST-3抗体によるChIP-seqを計画していたが、定量PCRによるクロマチン免疫沈降の確認まで進んでいる。今後、並行して行っている抗リン酸化RNAポリメラーゼII抗体でクロマチン免疫沈降の特異性の確認を経たうえで、大規模シーケンス解析に回す予定である。 計画EとしてLST-3と免疫共沈するタンパク質の同定を計画している。これまでにホルムアルデヒド固定した核を可溶化後に免疫沈降して、LST-3を免疫沈降し、共沈降したタンパク質を数十種類同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画A)のT. gondii UPRTを組織特異的に発現するトランスジェニック線虫の作製について、トランスジーンを染色体へ組み込んだ安定発現株の作製に想定外の時間を要した上に、線虫ではショウジョウバエや哺乳類と異なり、T. gondii UPRTを発現していない野生型株でも4TUが5分間の短い標識で効率よく新生RNAに取り込まれてしまい、計画どおりに新生RNAを組織特異的に標識することはできないことが明らかになったため。 計画B, Cについて、Aで得たトランスジェニック線虫と確立した新生RNA標識法を用いて実験をする計画であったが、標識法が確立されていないため、予定どおりには進行していない。 計画EとしてLST-3と免疫共沈するタンパク質の同定については、固定した試料から質量分析によるタンパク質の同定まで終えたが、候補タンパク質が予想以上に多数得られたため候補タンパク質の絞り込みが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画A)で野生型株でも4TUが5分間の短い標識で効率よく新生RNAに取り込まれてしまうのは、これまで4TUを基質としないと考えられていた線虫の内在性のUPRT相同タンパク質が4TUを基質としてUPRT活性を示すことによる可能性が考えられる。そこで、UPRT相同遺伝子の変異体を用いて4TUによる代謝標識行い、非特異的な新生RNAの標識が低減されるか検討する。umps-1その他のピリミジン合成経路酵素の変異体についても、同様に4TUによる新生RNA標識のバックグランドが低減するか検討する。これとは別にINTACT法(Nat. Protoc., 6, 56, 2011)により組織特異的に核をビオチン化して回収する方法についても検討する。 計画B, Cについて、Aでバックグランドの低いTU-tagging法またはINTACT法による組織特異的新生RNA調製法が確立できたら順次行う。 計画Dとして、抗LST-3抗体によるクロマチン免疫沈降で得たDNAを大規模シーケンス解析に回す予定であったが、その試料調製を終えた段階である。 計画EとしてLST-3と免疫共沈するタンパク質の同定については、候補タンパク質が多数得られているため、より生理的な条件下でLST-3と会合する候補タンパク質の絞り込みのために、現在は固定せずにLST-3を免疫沈降するための条件検討を行っている。
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Causes of Carryover |
全体として研究計画に遅れている部分があり、特に、Aで計画していたTU-tagging法による組織特異的な新生RNA標識法の確立に至らなかったため、高額の試薬代や委託料を予定していた計画B、C、Dの大規模シーケンス解析(RNAseqとChIPseq)および計画Eの質量分析によるタンパク質の同定の段階に進まなかったことが、平成27年度までの使用額が予定を下回った理由となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画AのTU-tagging法の検討は現在も進行中であるが、組織特異的な新生RNAの標識方法が確立できれば、計画B, Cの大規模シーケンス解析を行って所期の計画どおり研究費を消化する見込みである。計画Dのクロマチン免疫沈降については、すでに試料調製までは済んでおり、定量PCRによる特異性の確認の後に、大規模シーケンス解析に進む予定である。計画Eの質量分析についても、固定していない出発材料での試料について解析を行う。 これらの研究の遅れを回復するために、特任助教を雇用して研究の推進を図る。
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Research Products
(7 results)