2016 Fiscal Year Annual Research Report
mRNA前駆体の組織特異的転写後プロセシングの制御機構の解明
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26291003
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒柳 秀人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子発現 / 新生RNA / 線虫 / 組織特異性 / 転写後プロセシング / mRNA / RNAseq / 代謝標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画Aとして、TU-taggingによる線虫の生体における新生RNAの組織特異的な標識法と濃縮法の確立を目指しており、前年度までにT. gondiiのウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)を体壁筋特異的または神経系特異的に発現する安定発現株の作製までは順調に進んだが、線虫では野生型株でも4TUがよく新生RNAに取り込まれてしまうことが明らかになっていた。そこで、ウラシルの代謝経路の酵素の相同遺伝子を線虫で検索し、可能なものは変異体をCaenorhabditis Genetics Center (CGC)等から取り寄せ、4TUが新生RNAに取り込まれにくい変異体をスクリーニングした。その結果、ウリジン一リン酸合成酵素をコードするumps-1ともう1つの遺伝子が4TUを効率よく新生RNAに取り込むのに関与していることが明らかとなったことから、これらの二重変異体の作製を行った。 計画B,Cとして、Aで得たトランスジェニック線虫を用いて組織特異的に代謝標識した成熟mRNAの大規模シーケンス解析および新生RNAの経時変化の追跡を計画していたが、現在は、その準備段階として上記の二重変異体背景でUPRTを組織特異的に発現する線虫株の作製を行っている。 計画Dとして、各種組織特異的mRNAプロセシング制御因子変異体における組織特異的新生RNAの解析を予定していたが、現在は上記の二重変異体背景でかつmRNAプロセシング制御因子に変異を持つ株を作製中である。一方、4-チオウリジンを用いた代謝標識により各種組織特異的mRNAプロセシング制御因子変異体の個体における新生RNAの標識・精製は順調に進み、新学術領域研究「先進ゲノム」の支援を受けてRNAseq解析を依頼中、一部は取得済みであり、既にデータを受け取ったものについては、生物情報学的解析を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画AのT. gondii UPRTを組織特異的に発現するトランスジェニック線虫の作製について、トランスジーンを染色体へ組み込んだ安定発現株の作製に想定外の時間を要した。さらに、線虫ではショウジョウバエや哺乳類と異なり、T. gondii UPRTを発現していない野生型株でも4TUが5分間の短い標識で効率よく新生RNAに取り込まれてしまい、計画どおりに新生RNAを組織特異的に標識することはできないことが明らかになったため、この問題の解決に努めている。 計画B, Cについて、Aで得たトランスジェニック線虫と確立した新生RNA標識法を用いて実験をする予定であったが、上述のように標識法が未だ確立されていないため、予定どおりには進行していない。 計画Dとして、各種組織特異的mRNAプロセシング制御因子変異体背景でUPRTを組織特異的に発現する線虫株の解析を計画していたが、上記と同じく、4TUの取り込み効率が悪い変異体でないと組織特異的に新生RNAを標識できないことが判明し、四重の交配が必要となったため、計画が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記載のように、ウラシル代謝酵素の二重変異体背景にすることで、4TU用いてT. gondii UPRTを発現する組織特異的に新生RNAを標識できる見通しとなった。そこで、現在はこれらの線虫株の交配を行っており、線虫株が完成したら、4TUを用いて実際に新生RNAを組織特異的に標識して濃縮できるか実験的に確認する予定である。期待どおり新生RNAを組織特異的に濃縮できることが確認されたら、液体培養した線虫を用いて大規模に代謝標識による組織特異的新生RNAの精製を行い、RNAseq解析に進む。 また、各種組織特異的mRNAプロセシング制御因子変異体とさらに交配してすることにより、各組織におけるこれらの制御因子の機能をゲノムワイドに明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
全体として研究計画に遅れている部分があり、特に、Aで計画していたTU-tagging法による組織特異的な新生RNA標識・精製法の確立に時間を要したため、その方法を利用して行う予定だった計画B、C、Dの大規模シーケンス解析に必要な高額の試薬代の消化が予定どおりに進まなかったことが、平成28年度までの使用額が予定を下回った理由となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画AのTU-tagging法による組織特異的な新生RNA標識・精製法に目処が付いたことから、平成29年度では、計画B, Cに従って新生RNAを組織特異的に標識して精製し、RNAseq解析を行う予定である。そのための試薬の購入および解析の委託により、延長した計画どおり研究費を消化する見込みである。
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Research Products
(8 results)