2014 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ流路超高速パルスラベルNMR装置の開発及びプリオン自己複製過程の解明
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26291011
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
桑田 一夫 岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 教授 (00170142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌足 雄司 岐阜大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70342772)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NMR / マイクロ流路 / パルスラベル / プリオン / 自己複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイネティックNMRを用い、リコンビナントプリオンタンパク質の構造崩壊過程の観測に成功した。構造崩壊過程は、B-へリックスとC-へリックスの中間にあるループ領域から生ずることが分かった(論文投稿中)。また、リコンビナントプリオンタンパク質の酸性領域で生ずる中間体を‘A型’と命名し、その特徴づけを行った。A型では、へリックスBとCは、部分的に保たれているが、S1からへリックスA、及びS2に至る領域において、立体構造がランダムになっていることがわかった。さらにA型が凝集体形成の起点となることもわかった(Honda et al., JBC 2014)。一方、超高速混合法により、A型がフォールディング中間体であり、これまで報告されてきた中間体(I型)よりも、天然構造に近い領域にあることも分かった(論文投稿中)。高速混合を行うためにT字型のマイクロミキサー(流路径:深さ100μm x 幅30μm)を試作し、デッドタイムを測定したところ、0.045 ml/min.の流速では1.6 msecであった。しかし、蛋白質のフォールディング過程を分光学的に測定するためには、紫外領域での顕微鏡観測が必要である。本研究の目的は、原子レベルでのNMR観測であるため、観測は、これ以降、NMRで行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に開発したカイネティックNMR を用い、これまでプリオン立体構造の進化過程を原子分解能で観測してきた結果、初期に崩壊する部位が明らかになり、またオリゴマーに至る前の「プレ凝集状態」がA型であることが分かった。本研究は、新規に「マイクロ流路超高速パルスラベルNMR 装置」を開発し、これらの特異的分子間相互作用の速度論的特徴をアミノ酸レベルで解析し、自己複製のメカニズムを原子レベル解明しようとするものである。本年度行った実験から、直径5 mmのNMRチューブ内で100μmのマイクロ流路を作成すれば、1.5 msec以下のデッドタイムで蛋白質の構造変化が観測可能であることが明らかになった。次年度、「マイクロ流路超高速混合装置」をカイネティックNMR に直接接続し、μ秒オーダーの時間分解能かつアミノ酸レベルの分解能でモノマーからオリゴマー状態に至る過程の観測する計画であるが、その準備が整ったため、達成度を(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR用のマイクロ流路混合器を作成し、プリオン進化過程の観測を行う。まず、大腸菌で発現・精製したリコンビナント正常型プリオンに対し、プレ凝集状態を作成する。プレ凝集状態は、異常型へ進化するときの前駆状態と考えられるが、キネティックNMRを用いた実験から、プリオンのBC ループ(ポリT 付近)付近の構造がまず変化することがわかっている。次年度は、マイクロ流路超高速パルスラベルNMR用い、プリオンの進化の過程において、どの原子の座標が先に変化するのか、またその順序やタイムスケールの問題はどうかなど、世界で誰も見たことがない現象を観測し、プリオン進化の本質を捉える計画である。特に、Dラベルしたリコンビナントプリオン蛋白質を用い、分子間相互作用のみの選択的観測も行う。これにより、マイクロ秒の時間分解能で、かつ原子分解能でプリオンの進化プロセスを解明する。
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Causes of Carryover |
前年度英文校正を依頼する予定だったが、間に合わなかったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、実験に使用するピペット類等の消耗品を購入予定である。
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Research Products
(11 results)