2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外O-GlcNAc修飾のNotchシグナルと血管形成における役割
Project/Area Number |
26291020
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡島 徹也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20420383)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 享典 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70444403)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | Notch / EOGT / O-GlcNAc |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、数年前に新規翻訳後修飾として細胞外O-GlcNAc 修飾の存在を発見し、EOGTを介した新規のO-GlcNAc修飾機構を解明した(Nature Commun. 2011; BBRC 2012)。一方で、哺乳動物では、EOGTはNotch受容体を糖修飾するが、生理機能は不明であった。最近、EOGTの遺伝子変異が、四肢末端と頭頂部に異常を伴う病因不明のAdams-Oliver症候群において同定された。本研究では、ヒトの表現型を手がかりにして、EOGT欠損マウスを用いた網膜血管の表現型解析や遺伝学的相互作用解析、そして、レポーターアッセイや相互作用解析などにより、細胞外O-GlcNAc修飾のNotchシグナルと血管形成における生物学的機能を解明することを目的とした。 昨年度は、網膜において、EOGTは血管内皮に発現し、血管のintegrityの保持に必要であることを明らかにしている。そこで、本年度は、EOGT変異マウスにおける遺伝子発現の変化を中心に解析を進めた。野生型マウス及び、EOGT変異マウスより、CD31抗体を用いて生後15日目のマウスより血管内皮細胞を単離し、定量的RT-PCR法により遺伝子発現変化を解析した。その結果、Notch受容体の発現レベルには変化が認められなかったが、HES1などのNotchシグナルの標的遺伝子の発現レベルの低下が観察された。それに一致して、Notch1のヘテロ変異マウスにおいて、Sulfo-NHS-LC-Biotinを用いた灌流実験より、血液網膜関門が正常に保たれていないことが明らかになった。これらの結果より、細胞外O-GlcNAc修飾の低下に伴うNotchシグナルの異常が血液網膜関門において、血管のintegrityの保持に必要である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EOGTのNotchシグナルにおける役割を明らかにしたこと、NotchシグナルとEOGTの血管バリアー機能における役割を示唆するデータを得たことから、本年度の研究成果をもとに、次年度以降の研究の進展が大いに期待できるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
Notchリガンドの細胞外ドメインには、EGFリピートが存在しており、受容体同様にO-GlcNAc修飾される可能性がある。従って、細胞外O-GlcNAcのNotchシグナル調節の様式として、リガンドのシグナルを送る能力、Notch受容体のシグナルを受け取る能力を制御する、という2通りの分子機序が想定できる。以下の方法に従い、これらの可能性を検証する。 a) 培養細胞を用いたNotchシグナル解析[レポーター解析] TP1レポーターやNotch/RBPJ複合体を検出するルシフェラーゼ相補性イメージング レポーターを野生型と変異体由来の培養細胞に発現させる。そして、Fc融合リガンド(Dll1-FcやJagged1-Fc)を添加した際の、Notchシグナルの変化を測定する。同様な実験をO-GlcNAc修飾部位をアラニン置換したFc融合リガンドを用いて行ない、リガンドのO-GlcNAc修飾の役割についても、解析対象に加える。 b) Notch受容体やリガンドの細胞表面への発現量に変化があるか[FACS解析] 野生型もしくはEOGT変異体由来の初代培養細胞(例えば、前述の脳血管内皮細胞)を用いて、透過処理の有無といった2通りの条件下でFACS解析を行ない、Notch受容体や各種リガンドの膜表面への発現量が、野生型と変異体の間で差異があるか、検討する。 c) Notch受容体とリガンド間の結合能に変化があるか[in vitro結合実験] 上記の結果、Notch受容体とリガンドの細胞表面への発現量が、野生型と変異体の間で差異が認められない場合、受容体とリガンド間の結合能を定量する。具体的には、野生型と変異体由来の培養細胞に各種リガンド(Dll1-Fc、Jagged1-Fc、O-GlcNAc修飾部位の変異体)を添加し、Fc結合量をFACS解析にて測定する。
|
Causes of Carryover |
本年度は、Notch1ヘテロ変異マウスの解析と並行して、Rbpjヘテロ変異マウスの解析を行う予定であったが、Rbpjヘテロマウスが不妊傾向にあり、解析に充分な産仔を得ることが出来なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
Rbpjヘテロ変異マウスを得るために、人工授精により産仔を得ることを試みる。そして、今年度同様に、Sulfo-NHS-LC-Biotinを用いた灌流実験より、血液網膜関門の異常の解析を行う。
|
Research Products
(9 results)