2015 Fiscal Year Annual Research Report
すべての生物に共通する膜タンパク質形成過程の構造生命科学
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26291023
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塚崎 智也 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (80436716)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質 / Sec / 膜タンパク質 / タンパク質輸送 / SecYEG / X線結晶構造解析 / 膜組込み / 構造生命科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜には様々なタンパク質が埋め込まれて機能しているが,これらの形成過程(タンパク質の膜へ組込み)は生命にとって必須の経路である。リボソームによって合成される新生膜タンパク質の多くはSecトランスロコンを経由する。Secトランスロコンは,3つの異なる膜タンパク質からなる複合体で,細菌ではSecYEG複合体,真核生物ではSec61複合体とよばれる。これまでに複数のSecトランスロコンの構造が報告され,タンパク質膜組込みについていくつかのモデルが提唱されてきた。しかしながら,さらなる詳細な理解のためには高い分解能での構造解析が待たれていた。本研究では,脂質キュービック相(LCP)法で得られた結晶から,これまでで最も高分解能(2.7オングストローム分解能)でのSecYEG複合体の構造をX線結晶構造解析により決定した。本構造解析によって,SecGのループがSecYEGにより形成されているタンパク質が通過する経路を塞ぐように位置しているという新しい知見が得られた。続く機能解析や過去の構造との比較,MDシミュレーションの結果から,閉状態のSecYEGでは,分子やタンパク質の拡散を防ぐためにSecGのループが通過経路の「キャップ」として働き,タンパク質が輸送される状態ではその「キャップ」を退けることで,タンパク質の輸送を調節していると考えられた。プラグとよばれる部位が細胞外側から蓋をしているという過去の知見と組み合わせて、SecYEGのタンパク質が通過する経路は,細胞膜の両側から閉ざされ,タンパク質の輸送に応じて開くという新たなモデルを提唱した。さらに,ペプチドが結合した別状態のSecYEGの結晶構造も報告しており,基質タンパク質との相互作用や,膜透過初期の構造変化も議論した。今回の報告は,SecY,SecE,SecGすべての構成要素を含む完全なSecトランスロコンの高分解能の報告であり,生命活動に必須であるタンパク質輸送の基礎研究の発展に大きく貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にそって順調に研究を進めている。本年度は,タンパク質の膜組込みに関わる構造生物学的な解析の論文を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
膜タンパク質の膜組込みに関わる膜タンパク質YidCならびにSecYEGの構造を昨年度までに,構造を決定した。これらの構造情報を用いて機能解析をすすめるとともに,YidC, SecYEGを含む複合体の構造解析を進める。タンパク質の膜組込み反応を完全に理解するためには,これら巨大な複合体の解析が欠かせない。大腸菌 SecYEG,YidC は同時に過剰発現させることができ(Bieniossek et al., Nat. Methods 2009),大腸菌 SecYEG,YidCを含む複合体は,適切な界面活性剤を選択すれば単離できる(Duong & Wickner,1997,EMBOJ.)。同様の手法によりT.t. 由来YidCと,Secタンパク質を同時に大腸菌に過剰発現させ,精製する系を組む。様々な界面活性剤を検討し,安定に複合体を精製できる条件を探索する。安定に複合体を単離できれば,結晶化へと進める。
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Causes of Carryover |
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
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[Journal Article] Crystal Structures of SecYEG in Lipidic Cubic Phase Elucidate a Precise Resting and a Peptide-Bound State2015
Author(s)
Yoshiki Tanaka, Yasunori Sugano, Mizuki Takemoto, Takaharu Mori, Arata Furukawa, Tsukasa Kusakizako, Kaoru Kumazaki, Ayako Kashima, Ryuichiro Ishitani, Yuji Sugita, Osamu Nureki, Tomoya Tsukazaki
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 13
Pages: 1531-1568
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Complete and peptide-bound structures of the Sec translocon2015
Author(s)
Yoshiki Tanaka, Yasunori Sugano, Mizuki Takemoto, Takaharu Mori, Arata Furukawa, Tsukasa Kusakizako, Kaoru Kumazaki, Ayako Kashima, Ryuichiro Ishitani, Yuji Sugita, Osamu Nureki, Tomoya Tsukazaki
Organizer
新学術領域研究「動的秩序と機能」第4回公開国際シンポジウム
Place of Presentation
九州大学(福岡県・福岡市)
Year and Date
2015-11-22 – 2015-11-23
Int'l Joint Research
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[Presentation] Structures of Membrane Protein Insertase YidC2015
Author(s)
Tomoya Tsukazaki, Kaoru Kumazaki, Shinobu Chiba, Mizuki Takemoto, Arata Furukawa, Toshiki Kishimoto, Yasunori Sugano, Takaharu Mori, Yoshiki Tanaka, Yuji Sugita, Koreaki Ito, Ryuichiro Ishitani, Osamu Nureki
Organizer
Structural Biological Dynamics: From Molecules to Life with 60 trillion Cells
Place of Presentation
東京大学(東京都・文京区)
Year and Date
2015-11-05 – 2015-11-06
Int'l Joint Research
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[Presentation] Structure and dynamics of Sec protein-conducting channel2015
Author(s)
Yasunori Sugano, Yoshiki Tanaka, Mizuki Takemoto, Takaharu Mori, Takamitsu Haruyama, Arata Furukawa, Tsukasa Kusakizako, Kaoru Kumazaki, Ayako Kashima, Ryuichiro Ishitani, Hiroki Konno, Yuji Sugita, Osamu Nureki, Tomoya Tsukazaki
Organizer
第53回日本生物物理学会年会
Place of Presentation
金沢大学(石川県・金沢市)
Year and Date
2015-09-13 – 2015-09-15
Int'l Joint Research
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