2016 Fiscal Year Annual Research Report
主要栄養シグナルを感知・統合するTORキナーゼ複合体ネットワーク
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26291024
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塩崎 一裕 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00610015)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | TOR / TORC1 / TORC2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、真核生物細胞で保存されたTarget of Rapamycin (TOR)キナーゼ含む2つの複合体、TOR complex 1および2 (TORC1およびTORC2) が2種類の栄養シグナル(窒素源、および炭素/エネルギー源であるグルコース)を感知・統合し、増殖をコントロールする細胞内情報処理ネットワークを構成することを明らかにする。 われわれは分裂酵母において、グルコース刺激がTORC2を活性化し、その基質であるGad8キナーゼをリン酸化・活性化することを既に報告した (Hatano et al., 2015)。このTORC2からGad8へのシグナル伝達に、TORC2複合体の制御サブユニットであるSin1が必須の機能を持つことを明らかにした (Tatebe et al., 2017)。Sin1は、TORC2がリン酸化により活性化する基質タンパク質を認識し、結合する役割を持つ。加えて、ヒト培養細胞を用いた実験によって、Sin1の機能はヒトのTORC2複合体においても保存されていることを示し、このSin1の機能を阻害することでTORC2によるガン遺伝子産物AKTの活性化を抑制できる可能性を見出した。 また、アミノ酸やアンモニアなどの窒素源によって活性化されるTORC1複合体についても分裂酵母をモデル系とした解析を進め、ヒト細胞でTORC1を負に制御することが知られているGATOR1複合体が分裂酵母でも保存されていることを明らかにした。したがって、遺伝学的解析の容易な分裂酵母は、高等真核生物TORC1のGATOR1による制御機構を理解するためのモデル系として活用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TORC2のSin1が、分裂酵母およびヒトの両方において、基質結合サブユニットであることを確立し、さらにSin1中央部のConserved Region in the Middle (CRIM)が基質結合部位であることを明らかにして、その立体構造を決定し、論文として発表した (Tatebe et al., 2017)。 分裂酵母細胞破砕液からのアフィニティー精製と質量分析によって、ヒトGATOR1と相同な複合体の同定に成功した。この分裂酵母GATOR1は、Iml1, Npr2, Npr3の3つのサブユニットからなり、それらの遺伝子破壊実験によって、ヒトGATOR1と同様に分裂酵母においてもGATOR1がTORC1活性を負に制御することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Sin1 CRIMドメインの構造解析により、酸性アミノ酸に富むループが発見され、さらにこの部分に変異導入を行うことによって、このループがTORC2基質との結合に必須であることを明らかにした。今後、このループ構造とTORC2基質 (Gad8およびAKT) との相互作用を化学架橋法等により検証する。 ヒトGATOR1複合体は、TORC1の活性化に関わるRag GTPaseのGTPase-Activating Protein (GAP)として働くことで、TORC1を負に制御することが知られている。分裂酵母においてもRag GTPaseであるGtr1-Gtr2のGAPとしてGATOR1が働いているのか、また、TORC1の窒素源に応答した活性制御にGATOR1がどのように関わっているのかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当該分野の他の研究者からの最近の論文発表の内容に鑑み、本事業の目的に沿ってさらに追加実験を行うことによって、よりインパクトの大きい論文の投稿を目指すため、次年度への延長申請を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験を行うための物品費、国際学会で成果を発表すると共に情報収集を行うための旅費、および論文掲載料に使用する。
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Research Products
(8 results)