2016 Fiscal Year Annual Research Report
PCNAサイクルと連動したタンパク質分解による複製制御
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26291025
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西谷 秀男 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (40253455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩見 泰史 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 准教授 (80380567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNA / 複製 / タンパク質 / 分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞が分裂増殖するとき、次世代の細胞に遺伝情報が正しく継承されなければならない。そのため染色体の複製は細胞周期に一度だけ正確に行なわれる。CRL4-Cdt2によるユビキチン化を介した分解系は、S期が開始するとクロマチンにロードされたPCNAに依存して、複製開始因子Cdt1を素早く分解する。また、UVなどによるDNA損傷時にも同様のシステムが機能する。これらの分子機構を明らかにするため研究を行なった。 1.Cdt2のC末端にPCNA結合モチーフ(PIPボックス)が存在する。PIPボックス変異Cdt2(Cdt2-PIP)発現細胞では、内在性Cdt2をノックダウンすると、S期およびUV照射後のCdt1分解が低下することをウエスタン法および免疫染色法で確かめた。S期の分解が不十分なため、Cdt2-PIP発現細胞では、G2期細胞の増加がみられた。 2. 精製タンパク質を用いたin vitro系での実験を進め、PIPボックスを持たないとCdt2は、Cdt1存在下でもDNAにロードしたPCNAとの結合が低いこと、Cdt2はフリーのPCNAとの結合が弱いが、DNAにロードしたPCNAには強く結合することを見いだした。 3. Cdt2のCdkリン酸化コンセンサス部位SPあるいはTPのSおよびTをアラニンAに変異させた。S期及びM期でのリン酸化がほぼ抑制され、PCNAとの結合が強くなっていることを見いだした。Cdt1のユビキチン化活性が増強すると予想された。 4. UV照射後のCdt1分解にはヌクレオチド除去修復系が関わっている。新たに、ヌクレオチド除去修復系が機能しなくても、ミスマッチ修復タンパク質がUV損傷部位にリクルートされ機能することを見いだした。G1期において、UV照射によるDNA損傷応答にミスマッチ修復系も関わることを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRL4-Cdt2によるユビキチン化機能において、Cdt2のPIPボックスの重要性を、PIP変異Cdt2を発現する細胞を用いた解析および精製したタンパク質を用いたin vitro 系の解析により明らかにできており、ほぼ論文投稿の準備段階に入っている。また、UV照射後のCdt1分解は損傷修復に関わっていると考えられている。Cdt1のPIPデグロンを高発現すると、DNA修復が阻害されること、そして、CRL4-Cdt2によるUV照射後の分解には、ヌクレオチド除去修復と平行してミスマッチ修復系も関わっていることを論文発表した。よって、研究は、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Cdt2のC末端に存在するPIPボックスの解析:CRL4-Cdt2のPCNA部位へのリクルートにCdt2のPIPボックスが重要な働きをしている。Cdt1をノックダウンした場合でもリクルートに影響がないかどうか、PCNAの染色パターンをもとに、S期の初期、中期、後期でのリクルートに違いがないかどうか調べる。 2. Cdt2のC末のリン酸化の解析:CDK予想リン酸化部位(SP/TP)変異体ではS期~M期にみられたリン酸化がほぼ抑制される。これを発現する細胞を用いて、細胞内でのPCNAとの局在の様子を野生型Cdt2と比較する。ユビキチン化能力、基質分解を細胞周期で調べる。また、SP/TP部位はMAPキナーゼの認識部位とも重なるので、紫外線照射時における挙動も合わせ調べる。 3. 分解阻害ペプチド発現による複製への影響について:CRL4-Cdt2はPIP-デグロンと呼ばれるPCNA結合モチーフであるPIPボックスとその下流に塩基性アミノ酸を認識する。もし、ユビキチン化に関わるリシン残基(K)を持たないPIPデグロンペプチドを発現すると、PCNA上でCRL4-Cdt2が基質ペプチドを捉えた状態で反応が停止すると考えられる。この状態では、複製や修復に影響がないかどうか調べる。蛍光タンパク質融合PCNA発現細胞にて、ライブイメージングにても解析を進める。 これらの研究をまとめ、学会発表、論文発表を行なう。
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Causes of Carryover |
当該実験を行なうにあたり、大学からの講座費および博士課程リーディングプログラムの学生支援の研究費による試薬購入などが可能になり、次年度使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究費と合わせて、研究の遂行および論文投稿に適正に使用する。
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Research Products
(8 results)