2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝暗号改変による翻訳後修飾タンパク質の革新的生産技術開発
Project/Area Number |
26291035
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坂本 健作 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, グループディレクター (50240685)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 拡張遺伝暗号 / 翻訳後修飾 / タンパク質工学 / RF-1 / ニトロチロシン / UAGコドン |
Outline of Annual Research Achievements |
古細菌由来のチロシルtRNA 合成酵素(TyrRS)を改変して、ニトロチロシンをtRNA に結合させる変異体を開発した。この変異体(nYRS)を用いて、大腸菌で発現されるリコンビナント・タンパク質に効率良くニトロチロシンを導入できることを確認した。これまでに他の研究グループから報告されているnYRS変異体と導入効率を比較する実験を行って、ニトロチロシンを導入したタンパク質の生産量が10倍以上に改善されることが示された。従来の変異体の効率では実用的なタンパク質生産に利用することは事実上難しく、本研究で初めてニトロチロシン化タンパク質を効率良く生産できるようになった。タンパク質のチロシン・ニトロ化は生体のストレス応答に係っており、ニトロ化部位もタンパク質上の複数個所に及ぶことがある。次の段落で述べる修飾アミノ酸の導入に優れた大腸菌株(RFzero)を用いて、開発されたnYRSが効率の高い変異体であり、1つのタンパク質分子中の3か所まで同時にニトロチロシンを導入できることがわかった。nYRS-RFzeroシステムは、ストレス応答の分子メカニズムの解明に貢献すると考えている。 翻訳後修飾を持つタンパク質の大量生産にさらに適合した大腸菌株の開発を行った。ニトロチロシンなどの修飾アミノ酸を遺伝的にコード化するためにUAGコドンを利用するが、UAGコドンに対する修飾アミノ酸の導入効率を高めるためには、UAGコドンを読み取ってタンパク質合成を終了に導く生体内因子RF-1を不活化する必要がある。研究代表者らは既にRF-1欠損大腸菌(RFzero株)の作製に成功していたが、さらにタンパク質生産に適した大腸菌株にするべく、ゲノム中のUAGコドンの置換によりRF-1除去が大腸菌の増殖に与える致死的な効果を抑えるための研究開発を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の当初計画通り、ニトロチロシンを認識するTyrRS変異体を得ることに成功した。RFzero株の改良を行うべく、ゲノム上の300か所のUAGコドンの同義語置換を終了して、新しいRF-1欠損株の作製に成功している。新規大腸菌株が修飾タンパク質の生産をどの程度効率化するかについては、さらに検討が必要だと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
修飾アミノ酸を認識してtRNA に結合させる酵素変異体の開発を進める。当初計画にあるように、開発の可能性の高いものに研究努力を集中させることで、研究期間内の成果の最大化を優先させる。他のグループから報告される成果も積極的に取り入れて行く。修飾アミノ酸(ニトロチロシン)を導入したタンパク質が不溶化しやくすくなる傾向を見出したので、タンパク質のフォールディングを制御しやすい無細胞タンパク質合成系の導入も検討する。既に開発されている大腸菌RFzer株や、26年度に開発を進めた新規RF-1欠損株から無細胞抽出液を調製して、無細胞系の立ち上げを試みる。このことにより、目的としているリン酸化アミノ酸などのタンパク質への導入系の開発を容易にしたいと考えている。 修飾アミノ酸を導入したタンパク質の発現用大腸菌株の開発は予定通り進める。26年度に開発を進めた新規RF-1欠損株は、目的のタンパク質発現に適した培養条件やプラスミド、プロモーター・システムの検討を行う。さらに、2つめの修飾アミノ酸を導入するためにAGGコドンの利用を進める。
|
Causes of Carryover |
該当年度中に全額を使用する予定であったが、年度末の端数が生じたため、次年度に繰り越して使用することになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度末に購入予定の物品を、年度初めに購入することで繰り越し分を使用する。残額が小さく、又、研究内容は年度をまたいで継続しているので、この使用計画で研究計画に支障は生じない。
|
-
-
-
-
[Journal Article] Multiple site-specific installations of Nε-monomethyl-L-lysine into histone proteins by cell-based and cell-free protein synthesis2014
Author(s)
Yanagisawa, T., Takahashi, T., Mukai, T., Sato, S., Wakamori, M., Shirouzu, M., Sakamoto, K., Umehara, T., Yokoyama, S.
-
Journal Title
Chembiochem
Volume: 15
Pages: 1830-1838
DOI
Peer Reviewed