2014 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体膜結合性転写因子ATF6の制御機構ならびに脊椎動物進化における意義の解明
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26291040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 和俊 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70182194)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小胞体 / 膜結合性転写因子 / 小胞輸送 / 小胞体関連分解 / エスコートタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ATF6 は小胞体ストレス(小胞体で行われる分泌・膜タンパク質の高次構造形成の異常)依存的なタンパク質限定分解により活性化される小胞体膜結合性転写因子である。本研究は ATF6 研究における以下の3つの重要課題を解決することを目的とするものである。 1)小胞体シャペロンの制御因子が IRE1 から ATF6 にスイッチした意義の解明:ATF6α もしくは ATF6β の転写因子ドメイン(膜貫通領域を削除している活性型)に、XBP1 内のスプライシング部位周辺を移植し、IRE1 依存的 mRNA スプライシングを受けると発現して転写を活性化するようになる変異型 ATF6 を作成したが、期待する大きさのタンパク質は発現しなかった。 2)ATF6 が短命タンパク質である意義の解明:SEL1L 依存性には ATF6 の内腔領域が関与していることも見いだしているので、ATF6α 内の欠失変異体を作製し、SEL1L 依存性を解析した。その結果、アミノ酸 554-602 領域が重要であることが明らかになった。 ATF6α の小胞体関連分解には、N 型糖鎖のマンノーストリミングが重要であり、そのトリミング酵素を逆遺伝学解析したところ、M9→M8 は EDEM2 が行い、M8→M7 は EDEM1/3 が行うという、これまでとは全く異なる結果が得られたので論文発表した。 3)ATF6 エスコートタンパク質の同定と解析:p23・p24・p25・p27・p28-1・p28-2・VIPL・Surf4 という8種類の cargo receptors をクローニングして、どの cargo receptor が ATF6 と有意に結合するか、免疫沈降実験等によって調べた結果、p23・p24・p25・p28 が結合した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの重要課題のうち、1)については進展が見られていないが、2)では ATF6 内の SEL1L 結合領域をアミノ酸 554-602 領域まで絞り込むことに成功しており、何より糖タンパク質の糖鎖依存的小胞体関連分解におけるマンノーストリミングに関与するマンノシダーゼを同定することに成功し、論文発表した。これまで、小胞体に存在する4つのマンノシダーゼ候補のうち、ERmanI と EDEM1 が重要で、ついで EDEM3、EDEM2 に至ってはマンノシダーゼ活性を有していないと考えたれていた。ところが我々が逆遺伝学的解析を行ったところ、EDEM2 が最も重要なマンノシダーゼであり、次いで EDEM3、EDEM1 や ERmanI の関与は低いという全く異なる結果が得られ、この小胞体関連分解の分野における新しい方向性を示した。3)では、予想通り、カーゴレセプターのいくつかが ATF6 の小胞輸送に関与する可能性を示す結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1)研究がうまくいっていない理由として、これまで作製してきたキメラタンパク質では、ベーシックロイシンジッパー領域が ATF6 由来のものと XBP1 由来のものと2つ存在し、それらが不適切な相互作用をするためにキメラタンパク質の発現を阻害していると考えられたので、XBP1 由来のベーシックロイシンジッパー領域を除いたコンストラクトを作製し、期待通りのキメラタンパク質が発現するか調べる。 課題2)SEL1L 結合領域をさらに絞り込んで、SEL1L 依存的に分解されない、安定な ATF6 を作出すると共に、小胞体関連分解に関与するレクチンである OS-9 および XTP3-B が ATF6 の分解にどのように関わるのか明らかにする。すなわち、OS-9 と XTP3-B はリダンダントなレクチンであるのか、それとも異なる役割を果たしているのか、逆遺伝的的解析により明らかにする。 課題3)ATF6と小胞体ストレス依存的に結合するカーゴレセプターの遺伝子破壊細胞を作製し、ATF6小胞輸送への影響を調べる。
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Remarks |
プレスリリースしました。
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