2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26291042
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 裕明 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80302602)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ストレス / 循環器・高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
レシオ型で定量が可能なMg2+プローブMag-fura2を用いて、培養細胞での細胞内Mg2+イメージング解析を行った。その結果、CNNM4/MagEx4の過剰発現によるMg2+の減少、ノックダウンによるMg2+の増加を確認できた。またPRLのノックダウンによるMg2+減少も確認できた。これらの結果からPRL-CNNM/MagExの細胞内Mg2+調節における重要性を明確にした。また、同じファミリー分子のCNNM2/MagEx2に関してもMg2+排出等の機能解析を行い、CNNM4/MagEx4と同様の分子機能を持つことも明らかにした。PRLやCNNM/MagEXがmTORシグナル伝達に影響している可能性が示されていたので、その上流で機能するシグナル伝達分子群について活性化状態を調べた。その結果、PRLのノックダウンを行った状態で、細胞のエネルギー状態をセンスして機能制御されるAMPキナーゼが活性化していることを見つけた。Mg2+制御が細胞のエネルギーレベルに影響し、その結果としてAMPキナーゼからmTORへのシグナル伝達が異常になっていることが示唆された。CNNM2/MagEx2のホモ欠損マウスは胎児期に死亡してしまうため、強く発現している腎臓で特異的にホモ欠損させたマウスを作成した。またファミリー間の機能相補の可能性について検討するため、CNNM2/MagEx2をヘテロ欠損CNNM4/MagEx4ホモ欠損したマウスも作成した。腸でポリープを自然に作るAPC遺伝子のヘテロ欠損マウスとCNNM4/MagEx4の遺伝子欠損マウスとを掛け合わせて、腸ポリープがどのようになるかについて解析した。その結果、腸ポリープの数や大きさ自体に顕著な変化は見られなかったが、組織学的な解析を行ったところ、上皮層から筋肉層への浸潤が半数近くのポリープで観察され、浸潤が誘発されていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、がん悪性化に関わる分子PRLとその結合標的として見つけたMg2+排出分子CNNM/MagExに関して、分子・細胞から個体レベルに渡る包括的な機能解析を行い、細胞内Mg2+制御の分子機構やその細胞レベルでの機能的重要性、またCNNM/MagExおよびそのファミリー分子による腸や腎臓での全身性のマグネシウム恒常性の制御における重要性を追究することを目的としている。26年度においては、研究計画に具体的に記した研究内容をほぼ実施することができただけでなく、腸ポリープの悪性化など予想しなかった重要な研究成果が得られた部分もあった。細胞の機能制御におけるMg2+の適切な調節の生理的な重要性を明確に示す実験結果であり、基礎生物学的に今後の発展が期待できるだけでなく、がんの病態を理解する上でも重要な発見と位置付けられる。これらの理由から、26年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進展した26年度の研究成果を受けて、基本的には当初の研究計画に沿った形で今後の研究を進めて行くことを計画している。ただそれと共に、特に重要な成果と考えられる腸でのポリープ悪性化に関しては、異なった観点からの解析も新たに加える。具体的には、他の研究で作成していたMg2+取り込みに関わるイオンチャネルTRPM6の遺伝子欠損マウスをこの研究に利用して、細胞内のMg2+を腸上皮細胞で下げた時にがんの悪性化がどのような影響を受けるのかについて検討する。また、線虫を用いた解析からCNNM/MagEx遺伝子が生殖巣の発生に重要であることが分かってきたので、その表現型レスキューを指標としたRNAiスクリーニングを行い、CNNM/MagExやMg2+調節と関わりの深い遺伝子を網羅的に探索することも新たな計画として加える。いずれも、研究開始当初には予想しなかった計画であるが、本研究の大目的として掲げた「細胞内Mg2+制御の分子機構やその細胞レベルでの機能的重要性」の追究に合致する内容である。
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Causes of Carryover |
26年度の研究計画を実施するにあたって、研究室に所属機関から配分され、執行上の研究目的が限定されていない運営費交付金で購入した物品を利用することができた。また、当初の研究計画はほぼ予定通りに実施することができたが、腸ポリープ形成に関するマウスでの解析実験など、予想していたよりも少数の解析で明確な効果を観察でき、研究費を節約できた部分もあった。これらの理由で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度も基本的に当初の研究計画に沿った形で研究を進めて行くことを計画しているが、「今後の研究の推進方策」に詳述したように、腸ポリープ形成の実験や線虫での解析など、本研究の目的に沿った内容の新たな研究計画にも取り組むことにしている。そのため、当初の27年度配分金額(補助金分と基金分を合計して400万円)だけでは十分ではない可能性が高く、26年度の次年度使用額と合わせて研究計画を実施する予定としている。
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[Journal Article] Reconstruction of insulin signal flow from phosphoproteome and metabolome data.2014
Author(s)
Yugi K, Kubota H, Toyoshima Y, Noguchi R, Kawata K, Komori Y, Uda S, Kunida K, Tomizawa Y, Funato Y, Miki H, Matsumoto M, Nakayama KI, Kashikura K, Endo K, Ikeda K, Soga T, Kuroda S.
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Journal Title
Cell Rep.
Volume: 8
Pages: 1171-1183
DOI
Peer Reviewed
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