2015 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖ノンコーディングRNAによる葉形成の分子機構の研究
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26291056
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
町田 泰則 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80175596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)
高橋 広夫 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (30454367)
町田 千代子 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70314060)
渡邊 雄一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60183125)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ノンコーディングRNA / AS1-AS2 / 遺伝子発現制御 / 葉分化 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
[I] Linc RNAの構造の研究: (1) FliとRli linc RNAの長さは約 500 ヌクレオチドであり、位置は ETT の翻訳開始点から約 2.5 kb 上流であることが確認された。また、PCR法により、二本鎖 RNAが存在していることが明確になった。栄養成長期の成長点から調整したRNA標品からは分子クローニングができなかった。(2) Linc RNAsの転写の仕組みは、まだ不明な点が多い。 (3) Fli Rli と相同な配列の検索:ETTの上流域以外には存在していないことがわかった。 [II] ETT 遺伝子発現と葉の形態形成におけるLinc RNAの役割の研究:(1) Linc RNAsのETT発現への影響: FliとRliに対応するゲノムDNAへのT-DNA挿入変異体を分離した。その結果、1つの変異体では Rli の量が減少した。変異体解析により、ETT 発現に対する正の因子である可能性が示唆された。(2) Linc RNAsの葉形成に対する役割:変異体では花芽形成に至るまでの栄養成長期が長いらしい。 [III] Linc RNAとタンパク質複合体の構造の研究:Linc RNAが存在する可能性がある核内顆粒(AS2 body:AS2 タンパク質を含む顆粒)の細胞周期依存性を調べた。その結果、細胞周期の M 期に蓄積し、それぞれがM期中期以降に倍化し、倍化したそれぞれが娘細胞に分配された。このように、正確に同じ数の AS2 body が分配されることから、何らかの分配の維持機構(non-stochastic distribution)が存在すると期待される。さらに微小管との関連性が指摘された。また、昨年度の計画の中で遅れていたETT メチル化の研究に関して進展があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[I] Linc RNAの構造の研究:(1) Linc RNA の構造決定:栄養成長期のRNAを用いて linc RNA をクローン化することを試みたが成功せず、完全長の配列を決定できなかった。しかし、PCR法ではFliと Rli が二本鎖 RNAとして存在することは明確になった。(2) Linc RNAsの転写の仕組みの研究:これは達成されなかった。(3) Fli Rli と相同な配列の検索:ETT遺伝子座以外のシロイヌナズナゲノム上には存在していない。 [II] ETT 遺伝子発現と葉の形態形成におけるLinc RNAの役割の研究:(1) Linc RNAsのETT発現への影響: FliとRliに対応するゲノムDNAへのT-DNA挿入変異体を分離した。その結果、1つの変異体では Rli の量が減少していた。葉の発生に異常が見られ、ETT 発現に対する正の因子である可能性が示唆された。(2) Linc RNAsの葉形成に対する役割:上記変異体解析で、幼若葉的葉形成と栄養成長期の葉形成が長く続くことがわかった。 [III] Linc RNAとタンパク質複合体の構造の研究:核小体近傍に存在するAS2 bodyとLinc RNAの関連は不明であるが、その形成が細胞周期に依存していることがわかった。つまり細胞周期の M 期に蓄積し、中期に倍化し、それぞれが正確に娘細胞に分配された(non-stochastic distribution )。一方、微小管の重合阻害剤処理により、AS2 bodies の形成が抑制されることがわかった。最近核小体機能に関わる遺伝子の変異体ではETT配列内部のDNAメチル化が低下していることがわかった。これは、Linc RNAがDNAメチル化を介してETTの発現を制御している可能性を示す。以上総合すると、達成レベルは60%くらいであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
[I] 公開されているデータによれば、ETT 遺伝子の上流域からは linc RNAが検出され、われわれ自身もこれを real time PCR 法により確認した。しかし、構造研究のためにスケールを上げて調整することを試みたが、検出されなくなった。これまでは、葉の葉原基を含む茎頂分裂組織からRNA精製を行ったが、今年度は花原基(発生学的に葉の原基と同じくAS1-AS2 の支配を受けている原基)の量が多いと期待される花茎の頂端部からRNAを調整し、構造決定を試みる。 [II] (1) Linc RNAの転写レベルと葉の形態との関連を解明する。昨年度の研究で生殖成長への移行が遅れることがわかった。今年度はこのような異常の定量化を行う。(2) このような表現型が ETT 遺伝子の転写レベルと関連しているかどうか、昨年度に引き続いて検討する。 [III] Linc RNAとタンパク質複合体の構造研究 (1) Linc RNAがAS2ボディーに存在するかどうかを生化学的、分子生物学的に調べる。(2) AS2ボディーを精製し、複合体成分のタンパク質の構造をできるだけ多く決定する。(3) AS2の葉形成における機能の変異体を用いて、ボディー形成との関連性を検討する。またlinc RNA の転写領域の変異体と葉の表現型及びAS2ボディー形成との関係を調べる。(4) すでに我々はAS2 ボディーの蓄積量は細胞周期のM期に上昇することを見いだしたが、今年度は微小管との関連を検討する。 [IV] Linc RNAのETTジーン・ボディーのメチル化に対する役割を研究する。最近我々は、核小体機能に必要な遺伝子の変異体において、ETT のメチル化レベルが変化するという予備的データを得た。今年度はこれを確認すると同時に、linc RNA の転写領域の変異体を用いて、メチル化との因果関係を調べる。
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Causes of Carryover |
今年度中に論文の投稿を予定しており、その投稿料等として残しておいたが、論文の準備が間に合わなかったため、次年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿料(オープンアクセス代金含む)、英文校閲料および追加実験のための実験用消耗品代。
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Research Products
(28 results)