2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物葉緑体内包膜における蛋白質輸送メカニズムの完全解明
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26291060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質膜透過 / 葉緑体 / オルガネラ / 植物 / 生合成 / 膜蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の葉緑体は様々な組織および器官で機能的・形態的に多様に分化して存在しており、その機能は環境変化による複雑な制御を受けている。多様な葉緑体の機能の維持には、各葉緑体の機能に適した蛋白質セットが、適材適所適時に輸送され機能しているからに他ならない。この葉緑体への蛋白質輸送の中核を成す内包膜のトランスロコンTIC複合体に関して、我々はシロイヌナズナから1メガダルトンの超分子複合体として精製し完全同定に成功した。さらに最近TIC複合体と連携し輸送モーターとして機能すると予想される新奇7因子からなる2メガダルトンの膜複合体も完全同定している。 このような状況において、外包膜のTOC 複合体、内包膜のTIC複合体、さらにモーター複合体が、同時に精製されてくるような、精製条件の検討を行った。前駆体を加えて輸送途上の膜透過中間体を含む超分子複合体、および前駆体を加えなくても精製される超分子複合体、それぞれについて、複合体形成様式の詳細な解析を進めている。さらに今年度の解析では、葉緑体へ輸送される蛋白質の前駆体として、ルビスコ小サブユニット前駆体の他に、電子伝達蛋白質前駆体、さらには、チラコイドまで輸送される光捕集系膜蛋白質の前駆体、ならびに、ミトコンドリアリボソームサブユニット前駆体を用いて、膜透過中間体を作成し、これを材料に輸送途上の超分子複合体の構成について比較をおこなった。その結果、いずれにおいても、基本的には同じ外包膜のTOC 複合体、内包膜のTIC複合体、さらにモーター複合体が精製されてくる事がわかった。この事は、これらの複合体が、多様な葉緑体蛋白質の輸送に共通に関与するジェネラルな輸送装置である事を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉緑体外包膜、内包膜を 前駆体蛋白質が連続的に透過するためには、それぞれの膜に存在するトランスロコンの機能的連携が必須である。これを詳細に解析するには、前駆体輸送途上の3つの複合体どうしの相互作用様式、前駆体との相互作用様式を生化学的に解析する事ができれば直接的である。これを達成するための精製条件の検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
輸送中間体を形成している前駆体にタグをつけて精製しているサンプルは、前駆体を輸送しているアクティブな超分子複合体であるといえる。一方で、複合体のひとつの因子にタグをつけて、前駆体中間体なしで精製しているサンプルは、レスティング状態の複合体であるといえる。その比較を進めたい。ただし、その精製量は、現在のところ前者のほうがかなり少なく、ここの精製量をさらに上げることが、解析のブレークスルーとなると思われるので、その点に特に力を入れて進めたい。
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Causes of Carryover |
当初、計画していた中間体複合体の大量精製は、植物材料の量や、葉緑体単離の試薬、デタージェント等、大量の消耗品を使用するために、確保していた物品費であったが、大量精製の前に、精製条件の最適化が必要なため、この大量精製の過程を次年度に繰越て使用することとした。いずれにせよ、次年度で行う、大量精製を繰り返し行わなければならない回数から考え、翌年度分に請求している物品費と合わせて使用しても、余剰が出る事はないと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
輸送中間体の大量精製のためには、植物材料の栽培を現在の数倍スケールに増やす必要がある。また、そこからの葉緑体の単離や、複合体精製に必要な試薬量も当然ながら数倍ずつ必要となる。この試薬等消耗品の物品購入費に充当する。さらに、この単離には、経験のある研究者の労力が必要であることから、人件費としても使用する。
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