2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNA脱メチル化機構の包括的理解と生物・非生物ストレス応答への新展開
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26291063
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木下 哲 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (60342630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA脱メチル化に代表されるエピゲノム情報制御は、植物発生や環境応答などの様々な局面に重要であると理解されている。しかしながら、生殖過程および種子形成を制御するゲノムインプリンティング以外の生命現象においては、その多くが未解明である。本研究では、インプリント遺伝子のDNA脱メチル化に影響を与えるalac4 (alarm clock for FWA imprinting)変異体から明らかになりつつある新たな展開に着目し、広くエピゲノム制御が関わる生命現象を理解することを目的とした。平成26年度は、alac4の原因遺伝子の特定によりCIA(Cytosolic Iron-Sulfur Cluster Assembly) 経路が浮かび上がっており、alac4の原因遺伝子の機能解析の詳細を報告した(Buzas D., et al, PNAS 2014)。CIA経路は、Fe-Sクラスターを補因子として必要な多くの酵素に対して、Fe-Sクラスターを生合成して、それをローディングするために必須の蛋白質群である。alac4はCIA経路の中でも、N末にDNAメチルトランスフェラーゼに類似のドメインとC末にFe-Sクラスター結合サイトを持つことより、エピジェネティックな機能が推測されていたが、実際にFWAインプリント遺伝子のDNA脱メチル化に影響することが明らかとなり、実際にエピジェネティックな機能を示すことができた。また、詳細な細胞内局在の解析、雌性配偶体中央細胞特異的プロモーターを用いた解析からAtDRE2蛋白質は細胞質と核に局在し、中央細胞にて機能していることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、AtDRE2の機能解析に関して、概ね順調に進展している。論文の査読者から強く求められていた改訂ポイントに沿って実験を行い、AtDRE2が機能している組織、細胞の特定、さらには細胞内の局在などの詳細を理解できる結果を得ることができている。さらには、種子のalac4/atdre2種子の致死性を部分的に相補した形質転換シロイヌナズナの作成から、alac4/atdre2の発芽可能なホモ接合体を得ることができている。このことにより、AtDRE2の栄養組織における機能解析、栄養組織を用いたゲノムワイドメチローム解析が可能となっており、現在これを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きAtDRE2のゲノムワイドなメチローム解析を通じて、栄養組織におけるDNA脱メチル化の標的遺伝子、すなわち変異体でDNAメチル化の変化が観察される遺伝子の同定を通じて、AtDRE2のさらなる役割を明らかにすることを予定している。
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Causes of Carryover |
予定した技術補佐員の確保が困難であったこと、また論文リバイズに予想以上に時間がかかり、次の実験に関わる発注に若干の送れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高度な技術を有した技術補佐員の確保が難しいため、研究室内の博士研究員にある一定期間、ゲノムワイドメチローム解析にエフォートを割いてもらうこととし、繰り越し分と合わせて雇用することにより研究をさらに加速化させる予定である。
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