2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26291073
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤島 政博 山口大学, 理工学研究科, 教授 (40127783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミドリゾウリムシ / 共生クロレラ / 二次共生 / 感染 / 細胞進化 / モノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
共生クロレラを包むPerialgal Vacuole膜(PV膜)に対して作成したモノクローナル抗体の抗原が真にPV膜に存在するのか、またはPV膜とクロレラ細胞壁の間隙に存在するのか、あるいは、クロレラ細胞壁に存在するのかを明らかにするために、作製した一部のモノクローナル抗体を使用してPV膜を膨潤させた細胞を間接蛍光抗体法で観察した。筆者等は、恒明条件下で共生クロレラのタンパク質合成を特異的に阻害すると、宿主細胞内の存在する多数のクロレラを包むPV膜が同調して膨張し、その後、宿主細胞表層から離脱し、リソソーム融合によるクロレラの消化が誘導されることを明らかにしている(Kodama, Fujishima, Protist 159, 483-494, 2008)。その結果、PV膜がクロレラ細胞壁と充分に離れた場所を観察すると、抗原はPV膜上に存在することが明らかになった。しかし、二次抗体の蛍光はPV膜全体ではなく、局所的に出現することから、抗原はPV膜に均一に存在する物質ではなく、局所的に存在する物質であることが明らかになった。PV膜には、リソソーム融合阻止機能、ミトコンドリア外膜との接着機能、光合成産物の糖をPV膜外に輸送するチャネルの存在が予測されているため、これらのどれかが抗原である可能性が考えられた。 共生クロレラを維持するミドリゾウリムシで高発現する遺伝子をRNAseqで検出し、一部の遺伝子について、遺伝子産物のタンパク質に対する抗血清を作製した。この抗血清を使用して、クロレラを維持している緑色細胞と維持していない白色細胞を間接蛍光抗体法で比較した。その結果、2種の遺伝子産物で緑色細胞が白色細胞より強く染まることを明らかにした(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.PV膜特異的モノクローナル抗体を使った間接蛍光抗体法による観察が有効であり、論文を執筆中である。まだ、解析に使用していないPV膜特異的抗体が複数あり、今後、複数のPV膜特異的抗原を同定できる可能性がある。 2.緑色株と白色株のRNAseqのデータを使用した間接蛍光抗体法で、緑色株で高発現する遺伝子でコードされるタンパク質の部分アミノ酸配列の合成ペプチドを抗原として抗血清を作製し、間接蛍光抗体法で緑色株と白色株の蛍光を比較した。その結果、緑色株で白色株より強い蛍光を示す抗原を明らかにできた。共焦点レーザー顕微鏡で解像度を上げて抗原の局在性を明らかにする。 3.上記1と2の抗体の結果が、他の二次共生系でも再現できるかを確認するため、クロレラを持つヒドラを野外から採集したが、研究室での培養に失敗し、間接蛍光抗体法で交叉反応性を確認することができなかった。再度、採集を行い、二次共生系での抗原量の普遍性を調べる。 4.PV膜特異的モノクローナル抗体には、PV膜を点状に染める抗体があり、平成28年度以降の実験で計画しているミトコンドリア外膜との接着部位に対する抗体が取れている可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マイクロインジェクションによる二次共生の人為的誘導 ミドリゾウリムシの近縁種のP. putrinumはチェックポイント3までは成功するが、4ができずに細胞内共生に失敗する(Kodama, Fujishima, Protoplasma 231, 55-63, 2007)。さらに、Paramecium属の他の種類ではチェックポイント1をクリアできない(藤島、未発表)。そこで、細胞内共生の最終段階のチェックポイントを調節する遺伝子と遺伝子産物をマイクロインジェクション技術を使用して解明する。 ミドリゾウリムシの大核クロマチンをP. putrinumの大核に移植した株を作製し、その株に共生クロレラを与えて、チェックポイント4の不能を治癒できたかどうかを確認する。次に、パルスフィールド電気泳動で分離したミドリゾウリムシ大核の特定染色体DNA、またはその染色体DNAをレアな制限酵素で断片化したものをP. putrinumの大核に移植し、その株に共生クロレラを与えて、チェックポイント4の不能を治癒できたかどうかを確認する。
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Causes of Carryover |
スペインで開催された第7回欧州原生生物学会議への参加者が、実施中の実験の都合で1名だけになった。ドイツのコンスタンツで実施する予定のミドリゾウリムシの野外採集が実施中の実験の都合でできなかった。その分の旅費を使用しなかった。さらに、1月~3月は、定年後の研究室の引っ越し作業のため、実験の中断を余儀なくされ、消耗品費を予定より使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の引っ越し作業の遅れを取り戻すために、計画実験の速度をあげ、必要な消耗品の購入に前年度から引き継いだ予算を使用する。
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Research Products
(10 results)