2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの自然免疫系における遺伝子の構造と発現調節による表現形質の進化
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26291074
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田村 浩一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00254144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 文 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90370121)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子進化 / 抗菌ペプチド / 遺伝子発現 / 遺伝子重複 / ショウジョウバエ / トランスクリプトーム / カビ耐性 / 環境適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエの食物選択において重要な要因となる微生物耐性に関して、特にカビ感染対する抗菌ペプチド遺伝子の発現応答や遺伝子産物の抗カビ活性をいろいろなショウジョウバエ種間で比較することを大きな目的とするが、本年度は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)とは異なる食性を示すDrosophila亜属に属する7種(D. virilis、D. robusta、D. brachynephros、D. immigrans、D. bizonata、D. hydei、D. melanica)に着目し、比較発現解析のコントロールであるキイロショウジョウバエと共に用いた。まず全ての種でカビが存在しない条件で飼育できる系および確実にカビを経口感染させるための培地など、必要な実験系を確立した。そして、それぞれの種について、3令幼虫の唾腺、脂肪体、消化管から全RNAを抽出した。約半数の種でRNAの調整が完了し、Illumina DNAシーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行った。 一方、キイロショウジョウバエ種群に属する種のみが持ち、カビ耐性に主要な役割を担っていることが知られているDrosomycin遺伝子には7種類の重複遺伝子があるが、種によって遺伝子構成が異なり、個々の遺伝子についてもコピー数が異なる場合がある。その中、Dro2-Dro5が局在するゲノム領域の塩基配列を、D. suzukii、D. takahashii、D. eugracilis、D. lutescensについて決定した。その中、コピー数の変異が最も大きいDro3について、発現量を幼虫、成虫で調べたところ、コピー数が少ないD. melanogaster、D. suzukiiではDrs、Dro5よりも少なく、コピー数が多いD. takahashii、D. eugracilis、D. lutescensではDrs、Dro5よりも多く、コピー数と発現量の間には関連が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である本年度は、実験系の確立に手間取り、予想外の時間を費やすことになった。具体的には、カビの有無による抗菌ペプチド遺伝子の発現をトランスクリプトーム解析によって網羅的に解析することを主目的としたが、用いたショウジョウバエ種の多くについて、カビの無い飼育条件、およびカビを確実に摂食させる飼育条件を確立するために時間がかかった。さらに、種によっては増殖率が悪く、RNAを抽出した唾腺、脂肪体、消化管などの器官の形状、大きさもまちまちで、必要量のRNAを集めるための時間も予想以上にかかってしまった。現在、本年度中にトランスクリプトーム解析を終了する予定だった種の中、半分程度についてはデータが出ているが、種によってはまだRNAを集める段階のものもある。 また、次世代シーケンサーによって得られる大量のデータを解析するための計算機環境の整備にもかなりの時間が費やされた。その結果、次世代シーケンサーによって得られたデータの比較解析も遅れている。しかし、それらのセットアップは今年度中に終了し、現在、データ解析のためのハードウェア、ソフトウェア環境は整った。 キイロショウジョウバエ種群のDrosomycin遺伝子群を対象とした研究は、概ね予想通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析による、いろいろなショウジョウバエ種の抗菌ペプチド遺伝子の発現解析は、今年度中に、昨年度完了する予定の種について完了するととともにさらなる解析を進め、ショウジョウバエ属全体にわたる発現パターンの進化を明らかにし、ショウジョウバエのカビをはじめとする微生物に対する適応の分子基盤を解明する。 また、カビ耐性を司る原因遺伝子と予想された抗菌ペプチド遺伝子については、キイロショウジョウバエのGAL4/UASシステムを用いて抗カビ活性を測定するための実験系の確立を目指し、そのための組換えDNAの作成に取り掛かる。さらに、摂食した生物が消化管内でどのように無毒化されるかを調べるため、ショウジョウバエ消化管内の微生物相を16S rRNAをマーカーとしたメタゲノム解析を行う。 キイロショウジョウバエ種群におけるDrosomycin遺伝子群の進化を明らかにするため、Dro3のコピー数変異が大きいDrosophila lutescens について種内のコピー数変異を調べ、コピー数変異が生じる分子メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定の消耗品が購入できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(4 results)