2015 Fiscal Year Annual Research Report
シクリッドにおけるオス集団内色彩二型の進化に関する研究
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26291078
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高橋 鉄美 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (70432359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽田 貞滋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192625)
渡邉 正勝 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90323807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 集団内多型 / 色彩 / 遺伝様式 / シクリッド / 国際情報交換 / タンガニイカ湖 / ザンビア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、タンガニイカ湖シクリッド魚類の多様性を解明するという大きな目的の一環として、Cyprichromis属魚類におけるオス色彩二型(青尾型/黄尾型)の遺伝的基盤と進化の解明を目指す。このため、以下のことを行う計画である。 a) オス色彩二型の起源を系統学的に推定する。 b) オス色彩二型の責任遺伝子を遺伝学的・発生学的に探索する。 c) オス色彩二型の維持機構を生態学的に調べる。 本年度は、8月から12月にタンガニイカ湖を訪れ、系統解析(上記項目のa)および生態調査(同c)に供するサンプルを採集した。また、昨年度および本年度に採集したサンプルを分子生物学的に解析し、以下のことが分かってきた。1) RAD-seqによるDNAのシーケンスデータが系統解析に有効であること。これにより、本属の系統をRAD-seqによって行う算段がついた。しかし、まだ採集できていない種があるため、実際の解析は来年度以降になる。2) C. coloratusの核DNAのある領域では長さの違うアリルが存在し、青尾型では長いアリルのホモ、黄尾型ではヘテロであることが分かった(短いアリルのホモは見つからなかった)。この結果から、簡単に色彩型を判定できる遺伝子マーカーを開発した。3) 乾季では、黄尾型オスが繁殖に多く参加していることが示唆された。本研究では、オス色彩二型の維持機構として「雨季と乾季で繁殖に参加するオスの色彩型が異なる」という仮説を立てた。この仮説を検証するため、乾季に採集したC. coloratusのメスおよび口内の稚魚(この種は口内保育を行う)の解析を行ない、黄尾型オスがより多く繁殖に参加していると考えられた。いっぽう雨季のサンプリングに適した時期は3月末から4月初めである。しかし本年度は職場が変わった関係もあり、この時期のサンプリングは行えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、現地におけるサンプリングと分子実験を行った。しかし、予想と異なる結果が得られている。つまり、種によって色彩型の遺伝的基盤が異なるということである。このため、今後の計画を少し修正する必要がある。これは、申請時に、結果によって柔軟に対応する旨を記していたことを反映した処置である。なお、この処置によっても目的は変わらず、そこへの道筋が少し変わるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
雨季にサンプリングを行い、より多く繁殖に参加しているオスの色彩型を調べる。これにより、「季節によって繁殖に参加するオスの色彩型が異なる」とする仮説を検証する。また、C. coloratusでは優勢ホモが存在しない理由が不明のままである。親子の遺伝子型の比較から、異型交配 (disassortative mating) の可能性は低い。このため、優勢ホモ致死または遺伝子重複の可能性も考えて、原因の特定を試みる。系統解析に関しては、未採集のC. microlepidotusとC. pavoを入手したい。前者は湖の北部のみに生息するが、最近治安が悪化してきたため、自らサンプリングするのは難しい。海外の研究者の協力を得るなど、別の方法を検討する。
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Research Products
(4 results)