2015 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性物質が制御する生物の動きと適応度に関する進化生態学的解析
Project/Area Number |
26291091
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮竹 貴久 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80332790)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 謙 玉川大学, 農学部, 准教授 (40387353)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 活動性 / 生理活性物質 / 選択実験 / 適応度 / コクヌストモドキ / 交尾成功 / 捕食回避 / 生体アミン |
Outline of Annual Research Achievements |
コクヌストモドキを用いて①歩行移動距離選抜系統間の繁殖形質の比較、②系統間の分子遺伝解析のための準備、③捕食選択圧をかけた集団と捕食圧のない集団で逃避行動の継代的な変化について解析を行い、さらに④アクドグラフ装置を用いた活動性の高低に対する人為選抜実験も開始した。①については、歩行移動距離の長い系統(LD)と短い系統(SD)について選抜をかけた系統間でメスが産んだ子を比較したところ、LD系統がSD系統に比べて有意に多くの子を残すことがわかった。これは分散がコストになるという一般的な生物の傾向とは逆の結果を示していることになり興味深い。この違いが、造卵数の違いもしくは、羽化までのどの過程に依る差が原因であるか調査中である。②については不動に対して人為選択を行った結果、不動時間の長くなった系統と短くなった系統において、ドーパミンを含むカテコールアミン類などの生体アミンの合成酵素遺伝子や受容体遺伝子、およびそれらのシグナル伝達系に関わる遺伝子の発現について、RNA sequence(RNA Seq.法)によって解析を行うため、系統の準備を行い、RNAを抽出した。③についてはコメグラサシガメをモデル捕食者として、捕食者が存在する条件としない条件におけるコクヌストモドキ集団の行動の変化を2世代にわたって観察した。その結果、処理系統とコントロール系統間の不動頻度及び不動時間に有意差は見られなかったが、処理系統の方がコントロール系統よりも有意にメスの活動性が低いことが明らかとなった。④については、これまではカラートラッカーを用いて、歩行距離の長い系統と短い系統を選抜していたが、この機械では30分間の移動しか解析できないため、生物の「動き」の基盤を選抜するにあたり、より質の異なる動きを抽出するためにアクトグラフセンサーを用いて、コクヌストモドキの活動量自体に人為選抜をかけることを開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活動性とも深くかかわる移動分散行動に対して、人為選抜は順調な直接反応を示しており、雌の繁殖形質に見られた相関反応の解析も順調に進んでいる。不動持続時間に対して人為選抜をかけた系統では、生体アミン関連遺伝子解析に向けた準備も順調に進んでいる。また活動性に対する直接的な人為選択実験と捕食圧存在下でのエサ生物の対捕食者行動の継代的変化の解析も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
歩行距離SD系統とLD系統において、頭部、胸部、腹部にわけてドーパミンの発現量を比較する。またSD系統とLD系統の雄の各形質(脚長、生殖器官など)についても比較研究を行う。さらに系統間の歩行移動距離に見られた違いが、具体的にはどのような歩行行動の要因を抽出した結果であるのかについても精査する。このほか不動持続時間に対して人為的に選抜をかけた結果「動き」に有意な差が生じたロング系統とショート系統については、ドーパミンを含むカテコールアミン類などの生体アミンの合成酵素遺伝子や受容体遺伝子、およびそれらのシグナル伝達系に関わる遺伝子の発現を比較解析する。また捕食圧存在下と、捕食圧が存在しない条件で飼育したコクヌストモドキの行動を引き続き、継代的な検証を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度は活動性を計測するアクトグラフを入れる恒温器を取りそろえたが、多量のサンプルを処理するために新たにアクトグラフシステムの設置が必要となった。今年度はアクトグラフ構築のマンパワー不足のために、赤外線センサーの配備を次年度に購入する予定としたため次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アクトグラフセンサーを、あと23個購入し、人件費を使って追加のアクトグラフシステムの構築を行う。
|
Research Products
(18 results)